ヘリコプターでパトロールや事件捜査などに当たる警察航空隊。熊本県警に今年度、九州では初めてとなる女性整備士が採用されました。

上空から県民の生活を守るその仕事に密着しました。

【飛び立つ様子】
空に向かって飛び立つ青色の機体。

名前は『おおあそ』。

熊本県警航空隊のヘリコプターです。

県警航空隊はこのヘリを使ってパトロールのほか、逃走車両の追跡などといった事件捜査、災害現場では行方不明者の捜索などを行います。

上空から県民の安心・安全を守る仕事です。

今から約半世紀前、1977年に創設された航空隊。

現在の機体は3代目です。

熊本空港に隣接する熊本県総合防災航空センターを拠点に活動しています。

所属隊員は隊長以下8人で、パイロットと整備士がそれぞれ3人の少数精鋭です。

【航空整備士 山下 海幸さん】「カメラの〈がたつき〉がないか、ゴムのようになっている部分が劣化すると亀裂が入るので亀裂がないか、オイル漏れがないかを確認している」

フライト前、念入りに機体の細部をチェックしているのは、今年度、航空整備士として採用された警察職員の山下 海幸さん、22歳です。

航空整備士の募集は欠員が出たときのみで、小型機の安全確認ができる『二等航空整備士』の国家資格を持っている人、または取得見込みの人が応募することができます。

〈県警の採用は2年ぶり〉九州にある警察航空隊で整備士として女性が採用されるのは山下さんが初めてで、全国でも7人しかいないといいます。

この日の午前中は約1時間半のパトロールへ。

整備士は、フライト前後に機体を整備するだけではなく、パイロットと一緒にヘリコプターに乗って後部座席でカメラを操縦。

撮影された映像は県警本部の通信指令課や各警察署に送られています。

細かな操作が必要で、そのまなざしは真剣そのものです。

【操縦の様子を少し見せる】

パトロールを終えるとすぐに格納庫に機体を移動し、点検します。

【山下 海幸さん】「いつ(出動)要請が入るか分からないので、エンジンのオイル漏れがないかなどを確認しています」

山下さんはモノづくりが好きな祖父と父親の影響で整備関係の仕事に興味を持ち、地元・福岡県の工業高校に進学しました。

【山下 海幸さん】
「幼いころ、実家に不審者が入ったことがあり、子供だけの状態だったからすごく怖かった。警察がこまめに見回りに来てくださって身近なところで安全を守るのが〈すごくかっこいい〉と思って警察に憧れた」

警察業務にも憧れていて、仕事について調べる中で警察航空隊を知り、目指すようになりました。

高校卒業後は岐阜県にある専門学校で3年間学び、資格を取得。

今年の春、念願の警察航空隊の一員となりました。

まだまだ駆け出しの山下さん。

日々、先輩たちから学んでいます。

【パイロット 青柳 友亜岐さん】
「一回、一回、止めるようなイメージを意識すること。光源がどこから入ってきているのか、広葉樹の隙間から狙うなら順光じゃないと撮れないとか。そういうところを意思疎通しながらやっていくといいと思う」

【山下 海幸さん】「そういう時は回って…?」

【パイロット 青柳 友亜岐さん】
「回って良い光源を探す。カメラはその時の状況に合わせて設定を変えないと我々が(目で)見ているのとはちょっと違うと意識しておくといい」

【山下 海幸さん】
「パイロットとのコミュニケーションが迷ってちょっと遅れたり、うまく取れてないなと思うときがあるので積極的にコミュニケーションをとっていきたい」

先輩たちは山下さんの成長に期待しています。

【中島 英幸 副隊長】
「男性の先輩に負けないぐらい頑張っている。『女性だから』というところでは心配していない」

【航空整備士 小林 祐太郎さん】
「指示をしっかり聞き、理解した上で行動しているように見受けられる。(男女の)違いはないが、体格が違うので彼女にあったスタイルを模索している」

【航空整備士 小松 大和さん】
「一生懸命、頑張っている。余裕をもって教えられる環境なので一つずつ身に付けていければ」

山下さんは整備だけでなく、実際にヘリコプターに乗って県民の安心・安全を守るこの仕事にやりがいを感じています。

【山下 海幸さん】
「熊本は災害が多いと思うが、(災害時などの)捜索ですぐ見つけて少しでも多くの人の命を救ったり事件捜査にも貢献して安全な暮らしを守っていけたらなぁと思う」

地上ではヘリの安全運航を支える整備士として、また、上空では機動力を生かした警察航空隊の一員として日々、努力を続けます。

テレビ熊本
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