鹿児島県鹿屋市にある大隅加工技術研究センター。県が10年前に整備した施設で、鹿児島の農産物をさらに魅力的にしようと、加工技術の研究や、商品化の支援をしている。名前は堅苦しいが、センターの研究者が生み出した驚きのアイスクリームに“熱い”視線が集中している。
新技術!砂糖を使っていないのに甘いアイス
そのアイスクリーム、材料は米粉。しかも砂糖を使っていないのに、甘~いのだ。
この新技術を伝える講習会には、カフェや物産館などの関係者が集まった。参加者は「自社農園のイチゴやレモンを使ったジェラートを作っていますが、コメも育てていて、コメで何かできたらと話していたので、参加しました」「ジェラートをするということで、しっかり勉強して、今後に生かしたい」と語る。技術を習得しようとやる気満々だ。

ポイントは2つの酵素!米粉に含まれるでんぷんを糖に
この日は米粉を使ったアイスクリームを作る実習も行われた。
砂糖を使わなくても甘くするポイントは「αーアミラーゼ」と「グルコアミラーゼ」という2つの酵素。水に溶かした米粉に2つの酵素を段階的に加え加熱すると、米粉に含まれるでんぷんが効率的に糖に変わる。

鍋にこれらの材料を入れ、へらで混ぜながら加熱していくと光沢のある真っ白い液体ができあがる。これは「ライスミルク」と呼ばれ、参加者は「ほんとですね、甘いですね」と驚いていた。

「コメを生かした新たなビジネスを推進したい」その思いに突き動かされ
「米粉と酵素を混ぜる」この手法は、研究員の山崎栄次さんが完成させた。研究し始めた3年前はコメの価格高騰前で、県内の耕作地の約3割を占めるコメを生かした新たなビジネスを推進したいという思いがあった。

研究段階では酵素を入れるタイミングや加熱する最適な温度など、答えを見つけるまでに苦労がたくさんあったという。山崎さんは「100はやっていないが何十回とやって、周りの人に出来損ないのアイスクリームを食べさせ、イヤな顔をされながらやりました」と笑う。
「コメからこんなにおいしいのが!」健康的なイメージも
この「ライスミルク」をアイスクリームメーカーに入れて15分ほどすると、米粉のアイス、その名も「ライスクリーム」が完成した。
「ライスクリーム」を食べた参加者は「甘くておいしかった。コメの味はしなかった。コメからこんなにおいしいのができるとは思っていなかったので、すごく新鮮。」「もうびっくりです。健康的で罪悪感がないような気がします。」といった驚きの声があがった。

レシピは無限の可能性 “6次産業化”のきっかけに
山崎さんは「コメの新しい使い道ということで、コメに携わる人に6次化とかそういったきっかけになるかなと思っています。乳製品にアレルギーがある人は当然なんですけれども、小麦粉も全く使っていませんのでグルテンフリーなどにも合ってくるので、健康に意識が高い人にも合うかなと思います。」と太鼓判を押す。
この技術は、大隅加工技術研究センターで教えてもらうことができる。「ライスクリーム」をベースに生クリームを加えて濃厚な味わいにしたり、地元の特産品を加えて「ご当地ライスクリーム」にアレンジしたりと、可能性が広がる。
米粉の使い道が広がり、米を生かした新たなビジネスとなりそうだ。 ※大隅加工技術研究センター TEL0994-31-0311
(動画で見る:甘~い“ライスクリーム” 米粉がアイスクリームに変身! 鹿児島・鹿屋市)