今やすっかり身近な冷凍食品。国内の工場出荷額は最高額を更新し拡大を続ける冷凍食品市場、鹿児島の現状を探ってみた。
身近な冷凍食品 売れ筋商品から時代がわかる
鹿児島市の街角で冷凍食品について聞いてみると「遅くまで仕事だったりするので楽をしたいとき用に便利」「夜ご飯とか酒のつまみに食べる」といった答えが。
売れ筋商品は時代背景も浮き彫りにする。
鹿児島県内に4店舗を運営しているスーパー、フレッシュフィールドなりざわの中間勝志さんは「これだけお米が高いのでチャーハンなど米飯関連の動きが前年比110%くらい伸びている」と話す。令和の米騒動の影響か。

チャーハンなど米飯関連が好調 令和の米騒動の影響か
時流に乗り冷凍食品製造部門が主力に成長
冷凍食品を全国各地に届ける工場が鹿児島県にある。いちき串木野市の「ナカシン冷食」。日々350種類の冷凍食品が作られているこちらの会社は明治33年(1900年)に鮮魚商として創業し、その後、さつま揚げなどの製造販売を始めた。
冷凍食品の製造は売り上げの最盛期だった約40年前から。代表取締役の中尾好伸さんは「ハンバーグやフライ類など洋食が増えていたので、それに合わせた食品を作っていくということで始めた」と語る。
その後、冷凍食品部門は主力事業に成長し、売り上げはこの5年で約1.6倍に。客からの注文をさばききれなくなり、2025年、設備を増やして生産ラインを強化した。

20年超のロングセラー商品 製造ラインに潜入!
そんなナカシン冷食で20年続くロングセラー商品が「山芋と蓮根 シャキシャキ肉団子」。400円前後で販売されている。
工場に潜入すると、機械の前に用意された大量のミンチに目を奪われた。重さは実に200kg近くある。

このミンチを機械に投入。するとレンコンやにんじん、シイタケなどの野菜を50%含む丸い団子になって出てきた。ベルトコンベヤーの上を20センチ間隔で2列に並んで進む団子は190℃の油の海へダイブ!
こんがり揚がった肉団子はそのわずか30秒後、今度はマイナス40℃近くの極寒の冷凍エリアへ送り込まれた。

人手不足 油で揚げる食品の需要が高まる
こうして生まれた商品を記者が試食させてもらった。ふっくら肉厚の肉団子に、とろっとした黒酢のあんがかかっている。
「ごろごろした食感もありながら、ちゃんとお肉としての食べごたえもあってすごくおいしいです」と顔をほころばせた。

人気の理由は「時間をかけずにおいしく手軽に」
様々なメディアで冷凍食品の魅力を広める活動をしている「冷凍王子」こと冷凍生活アドバイザーの西川剛史氏は「夫婦共働きや核家族化で、時間をかけずにおいしく手軽に食べられる観点で冷凍食品が伸びていると思う」と分析する。

ナカシン食品によると「山芋と蓮根 シャキシャキ肉団子」のように油で揚げる食品は特に需要が高まっている。油を使う手間が省けることから、一般向けのほか、人手不足にあえぐ飲食店や介護施設との取り引きも増えているという。
鹿児島で生まれたおいしい冷凍食品からは、今の社会が抱える課題まで見えてきた。