鄙びた温泉街、迷路のような路地、静かにたたずむ木造駅舎…。
一度も来たことはないのに、なぜか懐かしく心惹かれる。
そんな、郷愁溢れる風景を求めて旅する「一人旅研究会」こと栗原悠人さん。
栗原さんが全国各地でカメラに収めた心揺さぶるシーンをお届けする。
写真・文=栗原悠人
温泉街を歩くと、使われなくなって久しい旅館に出会うことがある。
流行りや利用者層の変化に対応しきれず、悲しくも閉業してしまったのだろう。
人の手が入らなくなると、建物は途端に朽ちていく。
しかし、その朽ちゆく建物にも、賑やかな時代があったはずだ。
往時のきらびやかな様子を偲びつつ、ひと気を失い、自然に調和しつつある幻想的な姿を眺めるのも、また一興だ。
木々に浸食される廃旅館
■東北地方

木造の建物は緑に覆われていた。
■東海地方

各部屋からせり出しているのはベランダで、その迫り出し具合が部屋によって異なる素敵なデザインであった。平成中盤に閉業したという。

窓ガラスはほとんどが割れてしまっていた。