鄙びた温泉街、迷路のような路地、静かにたたずむ木造駅舎…。
一度も来たことはないのに、なぜか懐かしく心惹かれる。
そんな、郷愁溢れる風景を求めて旅する「一人旅研究会」こと栗原悠人さん。
栗原さんが全国各地でカメラに収めた心揺さぶるシーンをお届けする。
写真・文=栗原悠人
私は平成生まれだが、昭和の色を濃く残す風景に惹かれてしまう。
年季の入った建物や物を見て、「長い間、誰かに大事にされているんだろうなぁ」と感情移入出来ることが、自分が生まれる前の風景にもノスタルジーを感じる理由なのではないかと思う。
「古い、汚い」ではなく、映画などのセットでは出し得ない、その空間が過ごしてきた「物語」にそっと触れるのも、旅情や郷愁探訪の一つの楽しみだ。
まちなかで出合った「昭和」の香り
■長野県中野市

夏空を背景に佇む木造の鄙びた停留所。中には地元企業の手書きの宣伝看板が。
■福岡県北九州市

木造アーケードが美しい到津(いとうづ)市場。多くのお店が閉業している。かつては多くの買い物客で賑わっていた。
■島根県奥出雲町

亀嵩(かめだけ)の町に残る木製電柱。一体いつからあるのだろう。電力会社による旧字体が使われたホーロー看板もあった。