食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

植野さんが紹介するのは「BIGチキンカツ」。東京・飯田橋で半世紀以上続く洋食店「レストラン トリノ」を訪れ、巨大なもも肉のカツに、フレッシュトマトのポモドーロソースをたっぷりかけた一皿を紹介。

店主の母・涼子さんの「若者にお腹いっぱい食べてほしい」という思いから生まれたメニューと店の歴史にも迫る。

飯田橋の歴史あるイタリアンレストラン

植野さんがやってきたのは、東京新宿区の飯田橋駅。これまで、飯田橋にあるさまざまなジャンルの店で料理を学んできた。

カレーチャーハンを学んだ「雲仙楼」やチーズハンバーグを学んだ「ニューグローリー」、ゴーヤーチャンプルーを学んだ「沖縄料理 島」など。働く人や学生を支える飲食店が多く立ち並ぶ町だ。

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飯田橋駅から徒歩1分の場所にあるのが、開店から54年という歴史を持つ「レストラン トリノ」。店先に飾られたクラシックカーは先代が実際に乗っていたという。

店内もどこか懐かしい雰囲気に包まれ、テーブル席が多く広々とある。地下1階もあり、最大で70人を収容できるためパーティールームとして使われることも多い。

店主の赤平匡正さんは店舗の経営をしながらホール業務も担当。「レストラン トリノ」は、ランチメニューが1000円台と、飯田橋のサラリーマンを満足させる様々なメニューがある。

ボリュームたっぷりなメニューもたくさんあり、腹を空かせた人たちの味方のような人気店だ。

お金のない学生もお腹いっぱいに

トリノがオープンしたのは1971年。現在の店主・赤平さんの両親が喫茶店として始めた。

1987年、現在の場所への移転をきっかけにメニューも増えていき、イタリアンレストランになった。

「トリノ」の名物でもある大きなチキンカツもこの頃からあったそうで、そこには母・涼子さんの思いが詰まっている。

19歳の頃から働いているというスタッフは、涼子さんの思いをこう語る。

「ママ(涼子さん)が夜中に一生懸命大きいチキンをさばいて。学生さんがいたから大きくした。若い子はお金がないから、ピラフとかちょっとでも安いものとか頼んでいた」

涼子さんは優しい人柄でいつもお客さんのことを気にかけていたという。お金のない学生や若いサラリーマンに「お腹いっぱい食べてほしい」、そんな思いで「BIGチキンカツ」が生まれた。そして、この店が飯田橋で長年愛され続けている理由なのかもしれない。

「レストラン トリノ」店主の赤平匡正さん
「レストラン トリノ」店主の赤平匡正さん

植野さんから「トリノ」の今後について聞かれると、赤平さんは「地域密着。地元の方に愛される店は引き続き、継いでいきたい。昔ながらのものもありつつ、新しいものをちょっとずつ出していって、みなさまに飽きられることのない店づくりをしていきたい。チキンカツもどんどん大きくしていきたい」と語った。

本日のお目当て、レストラン トリノの「BIGチキンカツ」。 

一口食べた植野さんは「サクッというよりザクッとした食感、フレッシュなトマトソースの心地よい酸味」と称賛した。

レストラン トリノ「BIGチキンカツ」のレシピを紹介する。