食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

今回植野さんが紹介するのは「鶏肉の赤ワイン煮込み」。

浅草・観音裏にあるフランス食堂「サバ」を訪れ、鶏肉のうまみと赤ワインの豊かな風味が溶け合う、シェフ自慢の一品を紹介。オーナーシェフ・山口義己さんの料理人生や「サバ」誕生までの物語にも迫る。

奥浅草にある飾らないフレンチ

今回植野さんがやってきた浅草。言問通りの北側エリアは、観音裏や奥浅草とも呼ばれ、これまで「魚処もがみや」ではあじのガリ巻き、「中華カド」では茄子辛子炒めなど数々の料理を学んできた。

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そんな浅草で愛される「フランス食堂サバ」は2005年開店。フランスの街角にある食堂を思わせる雰囲気で、カウンター8席にテーブル席が1つとアットホームな店内で、日常に寄り添う“飾らないフレンチ”が味わえると評判だ。

フランスの素朴な家庭の味をそのまま

厨房に立つ、オーナーシェフの山口義己さんは、25歳でフランスに渡り、本場のレストランで腕を磨いた経験を持つベテランシェフ。料理の提供をサポートする妻・亜華音さんと、夫婦二人三脚で店を切り盛りしている。

毎年夫婦でフランスを巡る山口さん。現地で学んだ食文化を、日本で気軽に楽しめるようにした料理は、おふくろの味とも言われている「牛ひき肉とマッシュポテトのグラタン」や「白いんげん豆のキャスレ」など、フランスの家庭に伝わる素朴な味わいをそのままにしている。

常連客からも「(通って)多分20年くらい」「味は本格的で間違いない、フランスで食べるのとあんまり変わらない」「フランス人が食べる味っていう感じがする」と好評だ。気取らずに楽しめて、日常に溶け込み、山口さんの腕が光るフランス家庭料理に思わず笑みがこぼれる。

これはフランス料理じゃない、と上京

工業大学の学生だった山口さんは、大学卒業後に調理学校へ進学し料理人の道を歩み始めた。

それから東京のレストランで腕を磨いたのち、フランスのグランメゾンなどで1年間修業。帰国後は生まれ故郷の群馬県高崎市で創作フレンチ「レストラン サバ」を開店した。

しかし「これ、フランス料理じゃないんじゃないかなって疑問を持って、自分のやりたいことをやるならやっぱり東京だな!と思った。それで高崎のお店は閉めて東京に来ました」と山口さん。

「堅苦しいイメージのフランス料理をもっと気軽に楽しんでほしい」と、そんな想いを胸に2005年に浅草で「サバ」を開店した。

親しみやすさと本格的な味わいが同居する、フランス家庭料理のビストロ。小さな子どもを連れても安心してフランス料理を楽しめるのもサバの魅力。

フランス家庭料理の温かさに包まれながら、くつろぎの時間を過ごせるサバは、街の小さな憩いの場となっている。 

本日のお目当て、サバの「鶏肉の赤ワイン煮込み」。 

一口食べた植野さんは「ソースの甘味とかすかな酸味、鶏肉の美味しさを引き立てる」と絶賛した。 

サバ「鶏肉の赤ワイン」のレシピを紹介する。