秋田・にかほ市の観光の窓口に店を構えるおにぎり専門店。運営するのは、後継者不足や新たな産業が生まれないといった地域課題の解決に取り組んでいる企業だ。秋田の食材にこだわり、地元生産者の発信につなげたいと、初めて手がける飲食業に挑んでいる。

“おにぎり屋”で農業の活性化へ

にかほ市観光拠点センター内にあるおにぎり専門店「おらほの」
にかほ市観光拠点センター内にあるおにぎり専門店「おらほの」
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にかほ市観光拠点センター「にかほっと」に2025年4月にオープンしたおにぎり専門店「おらほの」。ぎっしりと詰まった具が目を引くおにぎりが並ぶ。

開店から4カ月余り。多い時では1日に300~400個が売れる人気ぶりだ。

店を運営するのは、にかほ市を拠点にリサイクル事業などを展開する秋田マテリアルを傘下に持ち、新たな産業の創出などに力を入れている「AKIMATE holdings(アキマテホールディングス)」だ。

AKIMATE holdingsの佐藤佑介社長
AKIMATE holdingsの佐藤佑介社長

佐藤佑介社長は「秋田マテリアルとしてやっていた環境事業だけを突き詰めていっても、にかほ市が存続することにあまり影響を与えられない。そこで、いろいろな事業をやっていきたい、農業を活性化させていきたいという思いから『おらほの』につながった」と、新規事業立ち上げの経緯を語る。

きれいな水・土、美しい古里を残したい

これまで飲食業の経験のないAKIMATE holdingsがおにぎり店をスタートさせた理由は他にもある。

農林水産省が5年に1度行っている統計調査によると、2020年の秋田県内の農家は3万7116戸。2005年からの15年間で48%減少した。

担い手が減少を続ける中でも奮闘する地元の生産者の“こだわり”を届けたいという思いが、おにぎり専門店の開店につながった。

「生産者のこだわりを届けたい」と店に飾られている写真
「生産者のこだわりを届けたい」と店に飾られている写真

佐藤社長は「“子どもや孫の世代まできれいな水や土を残したい”という思いでやっているコメ農家に感銘を受けた。今やっている環境事業でも“未来の子どもたちに美しい古里を残したい”と考えていたところとリンクして、この思いを広めたいと思った」と話す。

秋田米サキホコレ×秋田県産食材

「おらほの」で現在使用しているコメは、全てがにかほ市産のサキホコレ。生産を手がける農家の一人が須田貴志さんだ。使用する農薬や化学肥料を通常の半分に抑えたコメ作りに取り組んでいる。

サキホコレを生産する農業生産法人 権右衛門の須田貴志代表
サキホコレを生産する農業生産法人 権右衛門の須田貴志代表

農業生産法人 権右衛門・須田貴志代表:
「にかほっと」という観光客がたくさん訪れるにかほ市の窓口で、地元のサキホコレをおにぎりとして、コメの主役として使ってもらえるのは生産者として本当に幸せなこと。地元で消費してもらうことで農地を守るという役割も店にはあるので期待している。

いぶりがっこやとんぶりを使ったおにぎり
いぶりがっこやとんぶりを使ったおにぎり

「おらほの」では、コメはもちろん具材にもこだわっている。いぶりがっこやとんぶり、みそなど秋田の食材が並ぶ。

AKIMATE holdingsの斉藤亜希さんは「最初は地のものにこだわりたかったが、まず今は秋田のものを広く使えたらと思っている」と話す。

一番人気は、秋田市の秋田市民市場で仕入れた「筋子」。おにぎりに欠かせないのりは、後から巻けるよう別添えになっているのでパリパリのまま食べられる。程よい塩気の筋子と甘みのあるサキホコレは間違いない組み合わせだ。

おにぎりは日替わりのみそ汁や小鉢が付いたランチセットにすることもできる。

生産者とつながり“おいしい”を発信

にかほ市観光の玄関口でこだわりの味を届ける「おらほの」。

「地元生産者を発信できるおにぎり屋を展開していきたい」と語る佐藤社長(右)と斉藤亜希さん(左)
「地元生産者を発信できるおにぎり屋を展開していきたい」と語る佐藤社長(右)と斉藤亜希さん(左)

佐藤社長は「まずはにかほ市で農家や漁師たちとつながりながら、ご当地のおにぎりを提供していきたい。その先は、由利本荘、横手などの地元の生産者を発信できるようなおにぎり屋を展開していきたい」と今後の展望を語る。

「おらほの」は、日本人のソウルフード“おにぎり”で、地域の「おいしい」を多くの人に発信していく。

(秋田テレビ)

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