種子島では2月23日、温かな春の日差しの中で早くも米作りが始まった。2026年、注目されているのは、乾いた田んぼに種もみを直接まく「乾田直播」という革新的な方法だ。中種子町平鍋集落の農家6人がこの新しい挑戦に踏み切った背景には、従来の米作りが抱える課題への解決策がある。
赤い種もみが秘める工夫
田んぼに撒かれた種もみは、通常とは異なる赤っぽい色に着色されている。これはコシヒカリの種もみに特別な処理を施したものだ。根の生育を高めるため、カビの一種であるマイコス菌とビール酵母が混ぜられている。この組み合わせにより、種もみの発芽率や初期成長が向上することが期待されている。
「乾田直播」は、従来の水田に苗を植える方法とは大きく異なる。苗を育てる手間を省き、種もみを直接乾いた田んぼに撒くことで、作業の効率化を図る手法だ。

農家の負担軽減と害虫対策
この新しい米作り方法を採用した農家は、その効果について具体的な期待を語る。「作業が軽減される、負担が少なくなる。もう一つはジャンボタニシの被害があり、それを軽減したい」と話す。

従来の米作りでは苗を購入する必要があったが、乾田直播では種もみから直接栽培するため、コスト面でのメリットも大きい。「(今まで苗を)購入していたんですけど、(種もみを)作ってもらって、そういった面も金額的には違ってくるかな。今年のでき次第ですね」と、農家は期待と不安を込めて語る。
試験栽培で見えた可能性と課題
2025年に種子島農業公社が実施した試験栽培では、興味深い結果が得られた。収量は通常の米作りと比べて7割ほどに留まったものの、種もみ代を約3割抑えることができたのだ。収量の減少はあるものの、コスト削減効果は確実に現れており、経営面での負担軽減が期待できる。
特に注目されるのが、ジャンボタニシによる食害を防ぐ効果だ。水田に苗を植える従来の方法では、柔らかい苗がジャンボタニシの格好の餌食となりやすい。しかし、乾田直播では種もみから直接発芽させるため、このような被害を軽減できる可能性がある。

梅雨から収穫まで
今回の乾田直播による米作りは、独特のスケジュールで進められる。現在は乾いた状態の田んぼに種もみが撒かれているが、梅雨頃から水を張り始める予定だ。そして7月下旬頃には収穫を迎える見通しとなっている。

種子島という温暖な気候を活かした早期の米作りと、革新的な栽培方法の組み合わせは、地域農業の新たな可能性を示している。平鍋集落の6人の農家による挑戦は、今後の種子島における農業の在り方に大きな影響を与える可能性がある。
労力とコストの削減、そして害虫対策という複数の課題に対する解決策として期待される乾田直播。その成果は7月の収穫時期に明らかになるが、地域農業の持続可能性を高める重要な取り組みとして注目され続けるだろう。
(動画で見る▶「苗を作らない米作り」種子島で始動 乾田直播で作業減、ジャンボタニシ被害も抑制へ)
