身元表示とワクチン接種も忘れずに

「普段から備えてほしいのはモノだけではありません」と平井さん。

災害時には、犬が脱走して離ればなれになることも考えられるため、首輪には鑑札と狂犬病予防注射済票を付けておきたい。マイクロチップや迷子札も装着しておくと迷子になった時に役立つ。

環境省がまとめた『東日本大震災における被災動物対応記録集』(2013年発行)によれば、東日本大震災の被災地10県市で保護された犬で、なんらかのかたちで所有者を記したものを身に付けていたのは689頭。うち、鑑札・狂犬病予防注射済票(片方または両方)あるいは迷子札を付けていた85頭は全頭飼い主が判明。一方、首輪のみを装着していた604頭のうち、飼い主が判明したのは85頭で14%だった。  

首輪に鑑札も付けておくと離ればなれになった時に再会できる可能性が上がる(画像はイメージ)
首輪に鑑札も付けておくと離ればなれになった時に再会できる可能性が上がる(画像はイメージ)

混合ワクチン接種や寄生虫予防などもしておいたほうがいい。

「避難所に入れてもらえないという事態を防ぐという目的に加えて、自分の愛犬を守るためでもあります。避難所には多くの犬が集まってくる。他の犬から病気をうつされたりするといった事故が起こる可能性もあります」

平井さんは言う。

「いざ被災した時、もちろん避難所の運営やボランティアといった支援者たちは精一杯支援しますが、それを当てにしすぎるのもあまりよくないと思うんです。自分の愛犬を守るという覚悟があれば、当然、災害時の危機管理も意識するようになります。それが判断力を養うことにも繋がり、いざという時に正しい判断を下せるようになる。私はそう思っています」

平井潤子(ひらい・じゅんこ)
人と動物の防災を考える市民ネットワーク、NPO法人アナイス代表。緊急時に飼い主と動物が同行避難し、人と動物がともに調和して避難生活を送ることができるよう、知識と情報の提供を行っている。

『決定版 犬と一緒に生き残る防災BOOK』(日東書院本社)

取材・文=青山 誠

プライムオンライン特集班
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