南海トラフ地震や首都直下地震など、最大クラスの地震はいつ起きてもおかしくない状況にあるといわれている。万が一に対して、日頃から備えるべきだろう。
地震によって引き起こされる被害はさまざまなものが考えられるが、忘れてはならないのが火災だ。
2024年元日に起きた能登半島地震では、火災によって約240棟が焼損し、東京ドームを上回る4万9000平方メートルが消失した。
また、2025年12月に政府の専門家会議が発表した予測によれば、冬の午後6時、風速8メートルで都心南部直下地震が発生した場合、死者は1万8000人で、このうち火災による死者が1万2000人にのぼるという。
そこで、被害想定の作成にあたった東京大学教授の廣井悠さんに、地震火災に対する備えについて聞いた。重要になるのは、「感震ブレーカー」の導入だという。
地震火災の半分は「電気」が原因?
「地震火災の原因は、季節や時間帯によって変わります。冬場の地震だとストーブなどの火気器具が火元になるケースが多く、夕方は食事の支度をしている家庭が多いため、コンロから出火しやすいといえます」
火を使う場所や器具が要注意といえそうだ。ただし、意外なところにも出火原因はあるという。
「地震火災の原因の半分程度は『電気』といわれています」
電気が原因となる火災もさまざま。地震によってタオルやティッシュなどが散乱し、電気ストーブから引火するケースだけでなく、家具の転倒によってコンセントにつながるケーブルが破断し、そこから出火するケースもあるという。
「火災を広げないためには、火の始末と初期消火が重要になります。しかし、震度6強レベルの地震となると身動きが取れない可能性が高いので、冷静に消火できるかというと、難しい部分もあるでしょう。そのため、自分自身が動かなくてもできる対策を、事前に行っておくことが大切です」
「感震ブレーカー」とは?
電気による火災を防ぐ対策として、廣井さんが教えてくれたのは感震ブレーカー。ブレーカーに設置しておくと、地震を感知した際に自動的にブレーカーを落として電気を止める装置だ。
「かつての電気火災は、電力会社が復旧して再び電気が供給されるようになった際に、破断したケーブルに通電して生じるケースが多くありました。近年は通電による火災は減っていますが、まだ発生はしていますし、地震発生直後の電気火災も少なくありません。そのため、『避難するときにブレーカーを落とせば大丈夫』という認識は改めたほうがいいでしょう」
