この夫婦制家族の本質的な側面と直系制家族の基本的要件である世代的継承に基づく「連続性」を基本とした死者祭祀―墓や仏壇の継承―との間に整合性を欠き、社会的・精神的な葛藤・確執となって浮かび上がったのが1990年代だった。

家族が変容し“不連続化傾向”を強めているにもかかわらず、依然として墓は継承システムをとって連続性が求められた。そのため、1980年代に入って、継承者のいない者(子どもがいない夫婦、未婚者、離婚シングル等)には墓を売らないなどの社会問題が次第に露呈する結果となった。

結婚すると姓が変わることの多い女性は墓を継ぎにくい(画像:イメージ)
結婚すると姓が変わることの多い女性は墓を継ぎにくい(画像:イメージ)

また、結婚して改姓する女子は姓の違う実家の墓が継ぎにくい。それが少子化社会にあってはより顕著に現れてくる。

仏壇や墓をかかえる者同士の結婚が増えるなか、一組の夫婦が夫方妻方双方4人の親の介護や看取りをかかえる。双方の仏壇や墓などの祭祀継承を課せられるケースが増えて、妻側の家の墓の継承困難を引き起こしている。

特に、核家族がさらに核分裂して単身者や子どもをもたない夫婦が増加した1980年代後半には、こういった傾向がより一層深刻化した。

家制度が廃止されても残る問題

戦後「家制度」は廃止されたにもかかわらず、墓の継承制や慣習の中に残り、継承問題・女性問題が顕在化していた。

そして1990年ごろまでは、このような社会的問題が起こっていても、人々は「私に子どもができなかったから」「男子を産めなかったから」「結婚しないから」と、個人的な境遇と考える人が多かった。

私は現代の家族形態とは合わない墓の問題を、社会に訴えたいと思っていた。しかし、当事者にはよくわかることでも、「家墓」を代々継いでいくことが美風だと思っている人たちには、問題が見えてこない。

その深刻さをどう伝えたらいいのか…そう悩んでいたとき、家族の「ライフサイクル」という言葉・概念に出会った。