近年増えてきているのが、「ハラハラ」だ。
これは「ハラスメント・ハラスメント」や「逆ハラスメント」と言われ、部下が上司へハラスメントすることを指す。こうしたことから、部下を傷つけるのが怖くなって指導が緩くなってしまったり、上司の助言などを受け入れられずに、ハラスメントという言葉に逃げる部下も出てくることもあるという。
誰にでも起こりうるハラスメント問題の理解を深める、社会保険労務士・村井真子さんの著書『職場問題ハラスメントのトリセツ』(アルク)から一部抜粋・再編集して紹介する。
50代男性会社員の事例
【上司の業務指導をパワハラだとして誹謗中傷する部下】
相談:
部下についての相談です。私は、証券会社で法務部の課長をしています。業務の性質上、誤りが許されないことが多いので、部下の書類は細かく確認・指導していて、それが私の仕事でもあると思っています。
しかし、私の指導について一部の部下が「威圧的だ」「パワハラではないか」と騒いだことがあり、それ以降、声をかけても無視される状態が続いています。私の指導については調査委員会による調査が行われました。
業務指導の範囲内であるとされたのですが、部下たちは調査結果も受け入れていないようです。
さらには無視だけでなく、私がパワハラ体質である、人格破綻者であるなどと誹謗中傷もしているようです。最近は体調がすぐれないこともあり休職を考えていますが、認めてもらえるか自信がありません。ヨウジ(50代・男性)
部下にパワハラ通報に…
ヨウジさんは昨年、直属の部下から社内のハラスメント相談窓口に「威圧的な指導をされる。パワハラではないか」と通報を受けました。
部下から申告のあった威圧的指導とは、資料の細かな確認や修正、ダブルチェックの要求などで、証拠として社内メールやSNSのスクリーンショットが提出されていました。