お墓を持っていたりすると、親のお墓を自分が継いだら自分の子どもに継がせるか、“墓じまい”をするかなどを考えることはあるだろう。
エンディングデザイン研究所代表の井上治代さんは、母親を亡くしお墓をつくろうとした際、後継ぎとなる子どもが姉と井上さんだけだったため、不条理な現実を突きつけられるという経験をした。それがお墓の継承について考えるきっかけになったという。
娘の場合は結婚して改姓し、家名が異なってしまうため、実家の墓を継ぎにくい。そして、やがてその墓は無縁墓になってしまう。
後継ぎが娘だけというケース以外にも、未婚者や子どものいない夫婦など、昨今多様な生き方も認められつつある中で、死ぬ際はいまだ旧態依然とした“家システム”が存在する。
著書『おひとりさま時代の死に方』(講談社+α新書)から、墓を通してみていく「家制度」のほころびを一部抜粋・再編集して紹介する。
家や墓は永続的ではなくなった
日本の墓は永続的に使用していく継承システムをとってきた。
一般的に「墓を買う」ことは墓所としての土地を買うことではなく、永代に使用する権利(永代使用権)を買うことを意味している。これらは、墓は「家族で入る」もの、家族は「連続する」ものという「永続性」が前提にあって成り立っている。
かつての直系制家族であるところの「家」がもつ本質的特徴でもある。「家」は家系上の先人である先祖を祀(まつ)り、世代を超えて永続することが期待され(連続性)、またそれを可能ならしめる「継承性」(家長権の継承、祭祀権の継承等)に際立った特質がある。

ところが、直系制家族の存続基盤は戦後大きく変容した。
夫婦制家族の理念が根づいた典型的な現代家族は、かつての日本の家制度のもとでみられたような、家の永続性を当然とする意識が希薄になった。
超世代的にひとつの地域に存続しようとしたり、家系の存続を強く求めて、メンバーを養子で補充したりすることも一般的ではなくなった。夫婦制家族一代を中心にして夫方妻方の双方の死者を想定するようにさえなっているのが現状である。
夫婦制家族は不連続の家族
そして何よりも夫婦制家族は一代限りで消滅する「不連続」の家族である。