名門経済紙が大谷翔平の長文記事
MLBチャンピオンシップシリーズでの大谷翔平選手の圧倒的な活躍を、米国社会は「野球で起きた出来事」ではなく、もっと大きな「社会全体に響くニュース」として扱い始めている。
そう分かったのは、試合の翌朝だった。いつものように米保守系ニュースサイト「ドラッジ・レポート」を開いた私は、思わず目を疑った。トランプ前大統領や中東情勢の写真が並ぶ政治ニュースの一角に、大谷がスイングする写真と 「史上最高の試合か?」 という見出しが躍っていたのだ。

このサイトは政治と外交を中心に扱うことで知られる。そこに野球選手の写真が大きく載るのは異例だ。気になってリンクを開くと、意外な媒体の名前が表示された。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版──株式市場や企業決算に重点を置く、あの経済紙である。
記事のタイトルはこうだった。
「大谷翔平が見せた『史上最高の試合』──10奪三振、3本塁打、そしてワールドシリーズへの道」
一見すると普通のスポーツ記事だが、中身はまったく違った。試合の経過を淡々と追うのではなく、冒頭からこう語り始める。
「それは本来、容易なはずがない。野球という競技は根本的なところで選手を打ちのめし、失敗を積み重ねさせるようにできている。だが大谷翔平は、その常識を疑わせる存在だ」
ここには、ただ「すごい選手がいた」という驚きだけでなく、「野球という競技そのものが変わる瞬間を目撃しているのかもしれない」 という視点がある。しかもその論調が、いつもは冷徹に市場だけを見る経済紙から発信されたという事実が重要だ。
WSJはもともと「資本や戦略に影響しない話題には紙面を割かない」 という方針を徹底していることで知られている。それが今回は1000語近い長文を使い、表現も数字の羅列ではなく、哲学的な語り口に近い形で大谷を描いた。
つまりWSJは、「これは投資家や市場が関心を持つべき現象だ」 と判断したということになる。スポーツ選手の活躍が 「文化や経済の指標」 として扱われた瞬間だった。
大谷翔平を“歴史に残る人物”と評価
同じタイミングで、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT) は言葉遊びを交えた見出しを掲げた。
「Ohtani, the Greatest Shoh on Earth」──“地上最高のショー(翔)”が歴史を更新。記事内ではこう書かれている。「オオタニという名の男が、人類が野球場で成し遂げた中で“史上最高”の試合をやってのけた──もっとも、“人類”という言葉が彼に当てはまるかどうかは分からないが」
