遠山さんによれば、流されたら呼吸を確保しつつ、体温の低下を防ぐことが期待できる「ヘルプポジション」という姿勢が勧められている。ポイントは次の3点だ。
1.あごを引いて頭を水面からあげる
2.脇を軽く締めて、膝を軽く抱える
3.風や波がある場合は、手足を広げてバランスを取る

「ヘルプポジションはライフジャケットを着用しているのが前提です。波や流れが強いところでの維持は難しいので、手足でバランスを取り、水が顔にかからないように風下を向くことを心がけましょう」
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また、流された際にお勧めできないのが“大の字になって浮く”こと。推奨された時代もあったが、波が顔にかかり、呼吸困難になるリスクがあることが検証されたそうだ。

「大の字の姿勢では、常に肺に空気をためておく必要があるため、声が出せず、手も振れず、助けを呼べません。ライフセーバーなどからも『助けを求めているのか、浮いているだけなのか判断ができない』と聞きます」
遠山さんは「海上保安官としての自分の過去の経験からも、流された人を100%助けるのは難しい」としつつ、「救助部隊も現場への到着には時間がかかります。しけた海には救助のプロもアクセスできない場合があります。事故が発生しない備えが最も重要です」と強調する。
海や川で遊ぶすべての人に、心がけてほしい意識と言えるだろう。

遠山純司(とおやま・あつし)
海上保安大学校卒。水難事故の救助に長年あたり、内閣官房内閣参事官、海上保安庁総務部教育訓練管理官、第三管区海上保安本部(横浜)本部長などを歴任。2022年6月から現職。一級海技士(航海)、一級小型船舶操縦士。
取材・文=内山直弥
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