次の世代も梅干しが食べられるように。

そんな思いで梅農家の、そして農業など1次産業に関わる人々の未来を切り拓くのが、株式会社うめひかりの代表取締役で、新規就農支援プロジェクト「梅ボーイズ」を率いる、山本将志郎さん(31)だ。

うめひかり代表取締役の山本将志郎さん(写真提供:うめひかり)
うめひかり代表取締役の山本将志郎さん(写真提供:うめひかり)
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和歌山県みなべ町で明治37年から続く、梅農家の三男として誕生。2019年に天日塩とシソだけで漬ける梅干し屋「うめひかり」を創業した。

和食やお菓子にも欠かせない梅は、特に夏は食べたくなる。「1000年続く日本の梅を、次の1000年に繋ぐ」をミッションに掲げる山本さんは、農業全体の未来を見据えた活動をしている。

「多くの梅農家は商品まで作りません」

山本さんが拠点とする和歌山県みなべ町は、梅のトップブランドとして国内外で名をはせる「南高梅」誕生の地。収穫量が全国の約25%を占め、日本一を誇っている。

約120年続く梅農家が実家の山本さんだが、北海道大学薬学部に進学し、がんの新薬の研究をしていた。

しかし、「実家の梅を活用した、梅の味を生かす、天日塩とシソだけのシンプルな素材で漬けた梅を作りたい」と思い至ったこと、そして前述のミッションを実現するために、「うめひかり」を創業する。

「実家は梅農家ですが、最初は梅干し屋になりました」

うめひかりの農園に実る梅
うめひかりの農園に実る梅

その理由は、「梅農家が最終製品まで作らないこと」がほとんどだからだそう。

「梅農家は梅の栽培をして、メーカーに卸す。そしてメーカーが商品を作ります。梅農家として梅を育てて卸したあと、その梅がどうなるのか知ることができません。梅農家が梅干しまで作っていると思われがちですが、実は分業制。大量生産できますが、やりがいが感じられにくいのです」