所得税の壁が103万円から最大160万円に引き上げられたが、「結局、誰にどんな影響があるの?」「いつからスタートするの?」と思っている人も少なくないだろう。引き上げにより所得税は多くの世帯で軽くなるが、「住民税」や「社会保険料」も合わせて見なければならない。特に、これから子供を産む可能性がある女性はこれらを考慮してキャリアを検討する必要がある。FPの坂本綾子さんが仕組みからわかりやすく解説する。

「年収の壁」という言葉はパート主婦にとっては以前からなじみがあり、この壁を意識して働いてきた人は多いでしょう。2024年秋の衆議院選挙で、国民民主党が壁の引き上げを主張したことから注目が集まっています。政党間の駆け引きを経て、2025年3月、国会で壁の引き上げが決まりました。

そもそも「年収の壁」とは何か、引き上げでどう変わるのか、影響を受けるのは誰で、どうすればいいのでしょうか。

年収の壁は3つある

収入が一定金額以上あると、所得税や住民税がかかり社会保険料の負担も生じます。年収の壁は、これ以上、給与をもらったら、所得税、住民税、社会保険料がかかるという境目のことです。

壁は低い方から、100万円を超えると住民税(自治体により多少前後する)、103万円を超えると所得税、106万円または130万円(勤務先の規模による)を超えると社会保険料がかかります。

3つの「年収の壁」のイメージ(編集部作成)
3つの「年収の壁」のイメージ(編集部作成)
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つまり、壁が目前の年収で働いている人にとっては重要です。年収が壁を越えて税金や社会保険料を払うことになると、その分、手取りが減るからです。壁の内側に収まるよう「働き控え」する人もでてきます。

3月に大きく引き上げられたのは、所得税の103万円の壁です。住民税の壁も変更となりました。壁を引き上げるために、税金の計算をする際に収入から引く「控除」の金額が改正されたので、壁に近い年収の人のみならず、収入のある人の多くに影響があります。