アニサキスが寄生した魚介類を生で食べることにより、激しい腹痛や嘔吐、アレルギー症状を引き起こす「アニサキス食中毒」。このほど、福井県立大学は生きているマサバを解剖し、調査した結果、腹部の筋肉にアニサキスが寄生していることが確認されたと発表した。これまで、アニサキスは魚の死後に内蔵から筋肉に移動するとされ、「漁獲後の速やかな内蔵除去」が予防対策の一つとして推奨されてきた。同大学の瀧澤准教授は「内蔵を取り除けば安心ではない。目視で確認する、腹部の身を加熱したり、冷凍したりして、予防してほしい」と注意を呼びかけている。
生きたサバの身にもアニサキス
生きているサバを切り開き、ブラックライトをあてると、腹部に長さ2~3センチ、体幅0.5~1ミリほどの細長い寄生虫が確認された。
「アニサキス寄生虫」だ。
これは、福井県立大学海洋生物資源学部の調査の様子。
瀧澤文雄准教授らの研究グループは、2021年6月から2025年6月にかけ、福井、岩手、静岡、長崎県沿岸の4地域で漁獲した生きたマサバを、船上などですぐに解剖し、アニサキスの寄生状況を調べた。
これまで、アニサキスは、魚の死後に内臓から筋肉へ移動するとされ、「漁獲後すみやかに内臓を除去する」ことが予防対策のひとつとして推奨されてきた。
しかし、今回の調査で、生きているサバの腹部の筋肉、つまり「身」にアニサキスが寄生していることが確認されたという。
瀧澤准教授は、「生きているサバを解剖して、死後移行という可能性をほぼ排除した上で調べたところ、筋肉にもすでにたくさんのアニサキスがいることが分かった」と話す。
身に97匹もいたケースも
アニサキスが寄生していた部位は、漁獲した地域によって異なるものの太平洋側では内蔵と筋肉でほぼ半数ずつ。筋肉の中では、9割以上が腹部に寄生していたという。今回、解剖したマサバの中には、多いもので内蔵に60匹、筋肉には97匹が寄生していたケースがあったという。
この結果から、瀧澤准教授は「内臓にたくさんいると、筋肉にもアニサキスが多くいる可能性が高く、相関関係がある」としている。
食中毒原因 アニサキスが多く…
厚生労働省によると、2024年に国内で発生した食中毒1037件のうち、アニサキスは330件で全体の31.8%、食中毒の原因物質で最大の割合を占めた。
(※2025年はアニサキスの割合は23.9%、ノロウイルスは39.4%)
長野県健康福祉部食品・生活衛生課によると、県内でも毎年、報告があり、2024年度は5人確認された。
瀧澤准教授によると、これは食品衛生法に基づいて医療機関から報告された数で、「病院の診療明細などのレセプト解析では年間2万件くらいあるとみられ、アニサキスによる食中毒はもっと多いとみられる」という。
胃の中を噛みちぎられたような
厚生労働省によると、アニサキス食中毒の主な原因食品は生のサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカ等。
食べて1時間から数日で激しいみぞおちの痛みや吐き気、嘔吐などの症状が出るという。
アニサキス食中毒の経験がある弊社スタッフに聞くと、夕食でイワシの刺身を食べ、5~6時間後に症状があらわれたという。
「数秒ごとに胃の中を噛みちぎられるような感覚の激痛が走り、のたうちまわった苦い記憶がよみがえる」と話す。
予防のポイントは
では、どうすればアニサキス食中毒を予防できるのか?
厚生労働省は、丸ごと1匹購入したときは、できるだけ速やかに内蔵を除去するよう呼び掛けている。
また、アニサキスは60℃で1分以上の加熱(70℃以上であれば瞬時)か、-20℃で24時間以上の冷凍で死滅するという。
そのまま刺身にしたい場合は調理中や食べる前によく見て確認する。ブラックライトを使うと光って発見しやすくなるという。
瀧澤准教授は「内臓を除去することは重要だが、それだけで安全とは言えない。その上で、筋肉部分(身の部分)を目視でしっかり確認することが大切だ」と強調する。
酢でしめても死滅しない
2023年、長野県内では原因食品が「しめサバ」と推定されるアニサキス食中毒が報告された。
酢でしめても死滅しないのか?
瀧澤准教授は「酢につけたときのアニサキスの活動を見たことがあるが、酢をかけると一時的にはむしろ元気になった」といい、酢で死滅することはなかったという。
また、醤油や塩、ワサビでも死滅しないという。
よく噛むとちぎれると聞いたことがあるが…?
瀧澤准教授は、「アニサキス自体には弾力があるうえに外側は硬いので、普段食べる程度のかむ力では死ぬことはほぼない」と話す。
「注意喚起につながれば」
「生きたサバの筋肉にアニサキスが寄生している」
福井県立大学海洋生物資源学部の調査により判明した科学的な裏付け。
研究に参加した卒業生の伊藤文哉さんは、かねてから魚釣りをする際、「釣った直後の筋肉の中にもアニサキスはいるのではと感じていて、それが今回の研究で判明してよかった」と話した。
瀧澤准教授は「今回の研究で生きたサバの筋肉にもアニサキスがいると判明したことで、今後、安全面での注意喚起につながってほしい」と期待している。
