水の上でぷかぷかと漂うラッコ。のんびりと空を見上げている姿はかわいくて癒やされる。
キュートさだけでなく、彼らを取り巻くシビアな環境も知ることができる『おいでよ!ラッコ沼への招待状』(世界文化社)には、ラッコの生態トリビアが36個取り上げられている。
その中から、子供や誰かに教えたくなる!そんなトリビアを、本書の監修を務めた動物学者の今泉忠明さんに教えてもらった。
1つ目のトリビアは「ラッコは地球上で一番毛深い生きもの」だということ。その理由は、海へと進出した長い歴史と、生息している厳しい海の環境にあった。
まずは、どのようにしてラッコが海で暮らすことになったのかをみていこう。
なぜラッコは極寒の海に出た?
野生のラッコは、“人間があっという間に意識を失うほど”冷たい海で暮らしている。
日本の北海道沖で見られる「チシマラッコ」、カリフォルニアやアラスカで見られる「アラスカラッコ」「カリフォルニアラッコ」が海域ごとにいる。共通するのは「水温10度以下の冷たい海で生息している」ということだ。
ラッコは生物学的にいうと「ネコ目(食肉目)イタチ科ラッコ属」に分類される哺乳類。草原や森などに住むイタチ類がラッコの祖先。
今泉さんいわく、今から5000万年ほど前にネコ目(食肉目)が誕生し、イタチ科は3000万年ほど前に現れた。そして、ラッコが海に進出したのが約100~300万年前だという。

ラッコの祖先と言われるイタチ類はもともと森に住んでいたが、ライバルが多くなると、あまり良くない場所(競争相手の少ない場所)へと追いやられた先が海べだった。
「強い生きもの、弱い生きものがいると、強い生きものがよい場所(食べ物が豊富で安全)で暮らし、弱い生きものが端(周辺)に追われる。そうした生きものは、移動した先の気候や食べ物が異なる場所で生き延びようとする。そして、その環境での生き残りに成功すると、その地に合った生きものになっていくのです」
森で暮らしていたラッコの祖先のイタチが海へと移動した流れは単純にいうとこうだ。