来年度予算案は3月31日までに参院を通過せず、これで高市早苗総理が目指していた予算の年度内成立はなくなった。
ただ4月11日までに議決されないと衆院の議決が優先されて自然成立するのと、11日までの暫定予算8.5兆円分はすでに成立しているので、国民生活への影響はない。
高市総理が“激オコ”
問題は「年度内成立」を公言していた高市総理の「メンツ」がつぶれたことだ。ある閣僚経験者によると総理は自民の参院幹部に対し「激オコ」だということだ。
衆院は高市総理の「号令」を受けて、与党の質問時間を減らすなど通常より短い審議時間で目標の13日に通したのだが、参院は過半数を割っているので与党の思い通りにはならなかった。
参院は衆院とは違った独自の動きをすることが多く、衆院の与党国対の議員によると「参院はどうやって話が進んでいるのか我々にはさっぱりわからない」ということだった。
ただ過半数には4議席足りないだけで30日に日本保守党の2人が賛成に回ることを表明したためあと2議席。首班指名では高市総理に投票した人もいたので過半数に届くのではないかと思ったのだが、与党側はここでギブアップしてしまった。
そもそも「審議時間の短縮は民主主義の否定」と野党とメディアは声をそろえて言うのだが本当にそうなのか。
野党議員の質問は“自説の開陳”
今国会はいつもより真面目に予算委の質疑を聞いたのだが、まず言えることは総理が出てくるとほとんどの野党議員が他の閣僚でなく総理の答弁を求め、かつ予算とは関係ない質問をする。
これ、質問というと聞こえがいいが実際は「自説の開陳」である。
特に多かったのが米国のイラン攻撃について「国際法に反する先制攻撃だから日本はトランプ大統領に頼まれても艦船を派遣することはないですよね。ないと約束してください」というタイプの質問=意見だった。
核開発をやめず、ミサイル攻撃も続け、かつテロ組織への支援を行なっていたイランに対する米国の攻撃を「国際法に反する先制攻撃」と決めつけるのはおかしくないか。その決めつけを元に「日本は艦船を派遣しないことを約束しろ」と繰り返すのだ。
野党が週末の審議を拒否
政治記者になってから30年。予算委の質疑(総理出席)というものを長年聞いているが、ほとんどが野党による「自説の開陳」で、それに総理が反論、否定を繰り返す。
正直なところ、有権者から少数の支持しか得ていない政党の人たちのユニークな「意見」を延々聞かされるのはかなり辛いものがあり、仕事でなければ聞かない。
イラン危機で大変なんだから、とりあえず予算は通しといて、足りないお金は予備費を使う。外交や自衛隊の派遣については外交防衛委員会で外務大臣と防衛大臣に聞き、石油については経済産業委員会で経産大臣に聞けばいいのではないのか。
自衛隊を本当にペルシャ湾に派遣するときは総理を外交防衛委に呼べばいいし。
それから週末の審議を野党が拒否したというのも変な話だ。民間企業でも役所でも、平日に終わらない仕事があったら週末にも働くではないか。それを「異例だ」と言って断るのって、フツーの感覚からズレてないか。
強引に予算を成立させればよかった
いっそのこと「衆院3分の2」を使って強引に予算を年度内成立させればよかったのにと思う。
ただ物理的には可能だがそんなことをしたら後半国会は参院がストップしてしまい、他に高市総理がこだわる国家情報庁の創設や皇室典範の改正が大変になるので、それはやめたほうがいいと自民党内からは大反対を食っただろう。
いや、だったら残りの国会も全部「衆院3分の2」を使って法案を通せばいいではないか。
野党やメディアは「国会軽視」であり「民主主義の破壊」だと非難するだろう。だが有権者はどう思うだろうか。
有権者が望むのは高市総理の指導力
毎日新聞が週末に行った世論調査の中に「与党は審議時間を大幅に短縮しました。これに対し国会軽視などの批判が上がっています。与党の国会の進め方についてどう思いますか」という質問があった。
この聞き方は回答を「与党批判」に誘導するものでフェアな調査とは言えないと私は思うのだが、それでも回答は「問題だと思う」37%に対して「思わない」38%とほぼ同じだった。聞き方を「フェア」にすれば「問題だと思わない」という回答が増えるはずだ。
同じ毎日調査で「高市内閣を支持する理由」は「総理の指導力に期待」が56%とダントツにトップだった。つまり高市総理が指導力を発揮しないと支持率は下がることになる。
高市総理は小泉元総理に似ている
高市総理は安倍晋三元総理の後継者だが、実はタイプとしては小泉純一郎元総理に似ている。
郵政民営化の単独争点で解散し、靖国は毎年参拝し、自民党をぶっ壊すと言い続けた。これに政治家、官僚、学者は顔をしかめたが国民は熱狂した。
高市氏にはあの小泉氏と同じ匂いがする。藤田文武・日本維新の会共同代表は連立を組む時に高市氏に高杉晋作の言葉を引いて「総理、狂ってください」と進言した。高市総理はもう少し狂ってもいいのではないか。
【執筆:フジテレビ客員解説委員 平井文夫】
