今から20年前の平成18年に天皇陛下がメキシコを訪問された際の模様を2回に分けて紹介する。メキシコご訪問の主な目的は「世界水フォーラム」へのご出席。「水」の研究をライフワークとされている陛下は、「江戸と水運」をテーマに基調講演に臨まれた。
平成18(2006)年3月26日放送「皇室ご一家」(第1366回 皇太子さま メキシコご訪問)を振り返る。
なお、本記事は当時のナレーションをそのまま記載。現在の天皇皇后両陛下をそれぞれ「皇太子さま」「雅子さま」などと記載する。
雅子さまと愛子さまがお見送り
皇太子さまは3月15日、「第4回世界水フォーラム」ご出席のため、メキシコに向け出発されました。
皇太子さまのメキシコご訪問は、平成4年以来、14年ぶり3度目です。
メキシコご訪問前の記者会見
3月10日、出発に先立つ記者会見で、次のように抱負を述べられました。
《皇太子さま おことば》
今回の訪問は日数が限られていますが、できるだけ多くの方々とお会いし、相互に理解を深め、また、メキシコという国についても更に理解を深めていきたいと思っています。また、今回は特に水フォーラムへのご招待でもありますので、この機会にメキシコが取り組んでいる様々な水問題についても理解を深めたいと思います。併せて、以前から関心のあるマヤ文明についても、視察を通して多くのことを学びたいと考えています。
また、今回訪問を見送られた雅子さまについても話されました。

《皇太子さま おことば》
雅子は徐々にではありますけれども順調に回復してきており、確かに、最近では足慣らしの意味での公務も、幾つか行えるようになりました。ただ、まだ、外国訪問のような遠距離を移動し、長い期間にわたる公務を果たすまでには十分回復しておりません。今回のメキシコ国への私の単独での訪問は、お医者様とのご相談の上で決めたことです。
今後、雅子と一緒に外国に行けるようになる機会が早く来ることを心から願っております。
ご一家でディズニー・リゾートへ
ご出発2日前の13日、皇太子ご一家は、千葉県浦安市の東京ディズニーリゾートにお出かけになりました。
このご訪問は、愛子さまが4月から学習院幼稚園に入園されるのを前に、ご夫妻が「同世代の子供と同じような体験をさせてあげたい」と希望し実現したものです。
ご一家は、ディズニーキャラクターのパレードを見物するなど、楽しい一日を過ごされました。
メキシコ大統領と和やかにご歓談
そして3月15日、皇太子さまは、政府専用機でメキシコに向かわれました。
海抜2200メートルの高所にあるメキシコの首都・メキシコシティ。人口が2000万人を超える世界一の大都市です。
東京国際空港を飛び立ってからおよそ13時間、皇太子さまは、メキシコシティのベニートフアレス国際空港に到着されました。
この日、大統領官邸にフォックス大統領を訪問し、和やかに歓談されました。
大統領は、「天皇皇后両陛下によろしく伝えてください」と話し、皇太子さまは「雅子が来られなかったことを残念に思っています」と述べられたそうです。
「世界水フォーラム」開会式
翌16日、市内のバナメックス・センターで行われた「第4回世界水フォーラム」の開会式に出席されました。
この大会は、地球規模で深刻化する水不足や水の有効利用について話し合おうというもので、3年ごとに開催されています。今回は、100カ国以上の政府やNGOの関係者らおよそ2500人が参加しました。
皇太子さまは、3年前に京都で行われた大会の名誉総裁を務められました。
《皇太子さま おことば》
メキシコ合衆国政府の招聘(へい)により開催されたこのフォーラムが、世界の水問題の解決に向けた大きな一歩となることを心から願い、私のあいさつといたします。
このあと、客席でメキシコの民族舞踊をご覧になりました。
美術館の庭園や自然公園をご散策
開会式終了後、皇太子さまは大会関係者らと一緒に、市内のオルメド美術館の庭園をゆっくりとご散策。くつろいだひとときを過ごされました。
続いて、ユネスコの世界遺産に登録されているソチミルコ自然公園へ。
皇太子さまはボートに乗り、園内の水路を見て回られました。
メキシコシティは、先住民のアステカの時代、大半が湖に浮かぶ大都市だったそうです。その後、植民地としたスペインが湖を埋めてしまい、盆地の様な形に変わり、現在に至っています。

水上交通史の研究をされている皇太子さま、大変興味深げに見ていらっしゃいました。
大統領主催晩さん会
この夜、水フォーラムに参加している各国の賓客らとともに、国立宮殿で催された大統領主催の晩さん会に出席されました。
水フォーラムの成功を祈るとともに、日本とメキシコ両国、そして世界各国との友好の輪がさらに広がることを願って乾杯されました。
水フォーラムで基調講演
翌17日、水フォーラムの全体会合が開かれ、皇太子さまは、「江戸と水運」をテーマに基調講演をされました。
まず2月に見学した、さいたま市の見沼通船堀などを例にあげ、「江戸と近郊とを結ぶ水上輸送が社会生活の発展に寄与しました」と解説。特に江戸のし尿がおわい船で肥料として見沼まで運ばれた事を高く評価し、「世界でし尿が川に捨てられていた時代に、江戸は、清潔で画期的な循環社会を築きました」と説明されました。
《皇太子さま 基調講演》
見沼通船堀の現地に立つと、今後の日本での、あるいは世界での水問題を考える方向を指し示してくれているように思われます。このような施設が、世界のそれぞれの地域に残っているはずです。それを保存し、活かすことが、それぞれの地域に最も相応しい水問題の解決策を見つけることに繋がるように、私には思えるのです。
海外の国際会議で初めて基調講演をされた皇太子さま。
このあと、会場内の各国パビリオンを熱心に見て回られました。
(「皇室ご一家」第1366回 平成18年3月26日放送)
