12月21日から開幕する全日本フィギュアスケート選手権。

去年、この大会で2位表彰台にのぼったのが、三原舞依(24)だ。

今シーズンは11月のGPシリーズNHK杯に出場。初お披露目となる衣装をまといリンクに立った彼女は「どん底からはい上がるのが大変だった」と語る。

自己最多13試合出場とGPファイナル女王の昨シーズンとは打って変わり、NHK杯が初戦となった三原。

ケガに苦しんだ今シーズン、三原にとって全日本が2戦目となる。

トップアスリートを目指したい

オフシーズンの8月、多くのアイスショーに出演するなどして過ごしていた三原は「新たにトップ選手の滑りをたくさんみて、いろいろ学んだことを生かせたら」と語り、来たる2023-2024シーズンに向けて、こう意気込んでいた。

陸上トレーニングをする三原
陸上トレーニングをする三原
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「昨シーズンの思い出といったら、いろんなことがあって、うれしいことも悔しかったこともありますが、一番心に残っているのが世界選手権の悔しさ。

その思いをもう一度、世界選手権に出てリベンジすることが成し遂げたいこと。シーズン最初から戦い抜いていけるように、体力・筋力をつけて頑張っていかなきゃいけない時期なので、全力を出し切って、昨シーズンの“悔しい”を笑顔で乗り越えたい」

今シーズンを「勝負の年」と見定め、中野園子先生からも「昨シーズンだけじゃない。舞依は証明できる」と背中を押されたという。

夏には「一つ一つの試合を大切に」と語っていた三原
夏には「一つ一つの試合を大切に」と語っていた三原

「先生の言葉、練習も信じて、しっかり練習して試合に臨めるように、コンディション調整も含めて一つ一つ試合を大切に、悔いを残さない思いを持って、日々全身、全力で進んでいきたい」

昨シーズンから口にしていた「トップアスリートを目指したい」という気持ちがよりあふれ出てきたという三原は、「キツくなってからそれを乗り越えていくのが真のアスリート。

そこに仲間入りできるように、心も体も強く、全力で日々を過ごしていけるくらいリカバリーもして、だんだん上げていきたい」と、気を引き締めていた。

しかし、彼女に再び試練が訪れた。

右足首のケガは「追い込みすぎた」

夏が終わり、フィギュアスケートシーズンが始まろうとしていた頃、右足首の関節の痛みが悪化する。予定していた試合の欠場を余儀なくされた。

あれから季節も変わり、全日本を前にした12月に足の状態を聞くと、「朝起きたときが一番痛いことが多いんです。ちょっとでも痛みが減ってくれたら、すごく幸せに思えて『今日ジャンプ跳べるんじゃないか』くらいのうれしさの積み重ねで、ちょっとずつレベルが上がってきた。

まだまだできていないこと、やれることもたくさんあるので、その日その日のMAXを出せるようにキツくても頑張ろうと思っています」と語る。

シーズンを目前に控えた頃、右足首の痛みが悪化してしまった
シーズンを目前に控えた頃、右足首の痛みが悪化してしまった

足の痛みは「練習量やトレーニングで追い込み過ぎたこと」だと振り返る三原。

「他の選手がやっているトレーニングを見て、すごいなと思ってやり始めて、どんどん量を増やしすぎてケアを怠ってしまった…。体が丈夫じゃないので、もっと強くしたいという思いから、量を増やし過ぎちゃったのかな。

でも過去のことを後悔しても変えられないので、未来に向けてどうしていこうか、とポジティブにしっかり捉えていかないといけない。落ち込みが激しかったんですけど、また氷の上に戻ることができたのはすごくうれしくて、今はその気持ちをスケートにのせようとしています」

氷上練習をする三原
氷上練習をする三原

足の痛みを抱えながら迎えた初戦のNHK杯。

三原の笑顔も戻り、ショートでは3つのジャンプをすべて着氷し4位につく。

続くフリーではジャンプに乱れはあったものの、今できるベストの演技を披露。

数々の試練を乗り越えたからこそ手に入れた、彼女の“強さ”に胸を打たれる4分間だった。

初戦となったNHK杯を振り返る三原
初戦となったNHK杯を振り返る三原

NHK杯では多くの声援を受け「本当にこんなに温かい場所にいたんだなって、久しぶりの試合で心から感じることができて、緊張はどこかいっちゃいました」と語る。

全日本までの期間を三原は「シーズンが始まる前は元気いっぱいだったので、全日本までの試合がここまで少なくなってしまうとは思ってもいませんでした」と肩を落とす。

「7、8月くらいは元気だったのにってすごく悲しい気持ちが大きかったんですけど、でもここまでの経験を生かしていく場面だって思って。

ここで終わりじゃないと、どん底からはい上がるのはすごく大変だったんですけど、時間が経つにつれて焦りとかもあって、その中でスケートをしたい気持ちと、そこまで追い込んじゃいけない足との葛藤もありました。

本当に少しずつしか進めない状態だからこそ、いまできることをちょっとずつ、と思っています」

去年の表彰台は人生で忘れない

三原は何度も“どん底”からはい上がってきた。

北京五輪代表を逃した2022年。

「リスタート」と題して、「もっと強くなりたい」と、1人でカナダに短期留学などをし、レベルアップを図ってきた。

2022年の全日本選手権で笑顔を見せる三原
2022年の全日本選手権で笑顔を見せる三原

「もう一度、日本代表選手になりたい」という思いで、去年の全日本では2位表彰台にのぼり、2017年以来の世界選手権の切符を手にした。

2022年全日本の表彰式で坂本花織やコーチらと写真撮影
2022年全日本の表彰式で坂本花織やコーチらと写真撮影

「去年はカオちゃんと一緒に表彰台にのぼることができて、表彰式で先生方と写真を撮れた瞬間はいつ思い出してもうれしい。

ショートもフリーもベストを出し切って表彰台にのれたうれしさは、これからの人生で忘れることなく、ずっと心にある。

その瞬間をもう一度、新しいプログラムで演技をして表彰台にのぼれるように頑張りたい思いはすごく強いです」

「全日本に舞台に立つことがうれしい」と三原
「全日本に舞台に立つことがうれしい」と三原

だからこそ三原は「シーズン始まる前の目標である『世界選手権にもう一度出る』ことを達成するために、今できること、今しなきゃいけないことは何かを日々考えながら、焦りながらですけど、スケートを楽しみたい」と語る。

そんな三原にとって全日本は「今までいろいろなことがあった全日本ではあるんですけど、滑る瞬間は多くの方が見てくださって、応援してくださって、拍手の音や応援の声がすごく温かい雰囲気で。緊張感もあって、それが全日本だと思っています。

今年もまた、全日本の舞台に立つことができるのが、何よりもうれしくて、その舞台に行くことができたからには、自分のできることを全部出し切りたい。緊張するとは思いますが、楽しむことを忘れずに1つ1つを振り返りながら滑りたいです」と意気込む。

「なんとかします、大丈夫です」と笑顔で話す三原
「なんとかします、大丈夫です」と笑顔で話す三原

今年の会場は長野・ビッグハット。三原にとってさまざまな大会で演技を披露してきた場所だ。

「先生からも『長野は大丈夫』と。楽しみな舞台でもあるので、またその舞台にいけることがうれしいし、出し切れるようにしたいです」

「なんとかします、大丈夫です」とはつらつとした笑顔でそう言ってのけた三原。

どんなときも決して弱音を吐かない“強さ”が彼女を戦いの場へと引き寄せる。

“絶対に諦めない”気持ちで挑む全日本の舞台。見ている人の心を揺さぶる彼女の演技に注目だ。

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
FODで全選手・全演技LIVE配信

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班