全日本フィギュアスケート選手権が12月21日から開幕する。
現在2連覇している宇野は、今シーズンは“表現力”を磨き、「自己満足」をテーマに掲げている。
その全日本に向けては、みんなの演技も楽しみだとしつつ、「演技を“こなす”のではなく、感情が前のめりになるような演技をしたい」と語った。
全日本は「すごく楽しみ」
今シーズン、GPシリーズ2戦とGPファイナルに出場した宇野。
GPファイナルのショート後に「たまったものじゃないですよ、このハイレベル」と発言していた。
改めてその真意を聞くと「そういう冗談言いましたね。ショートで4回転アクセルを跳ばれたりしたら、こっちはお手上げです。僕もゆづくん(羽生結弦)やネイサン(・チェン)といった自分よりうまい選手がいた中で試合をこなしてきたので、そういう方が僕は面白い。
『どっちが勝つのだろう』って勝負事として見る方が面白いと思ったんです。イヤとかではなく、そういった冗談です」と笑った。
ファイナルを終えた後のインタビューでも宇野からは、多くの選手たちの名前が飛び出す。

「(イリア・)マリニンがすごすぎて、三浦佳生くん、佐藤駿くん、鍵山優真くんはまだ全然若いので、彼と戦っていかなければならない。もちろん(山本)草太くん、(友野)一希くん、(島田)高志郎くん、他の選手たちもいますが、年齢的にはこの3人がずっと戦っていく。彼らは本当に大変な時代に生まれてしまったな」
こう話すのは、宇野自身も、羽生結弦さんやネイサン・チェンらの存在が、モチベーションアップにつながっていたからだという。
だからこそ「誰もが良い演技をしてほしいと思えるスケーターたちばかりなので、全日本という特別緊張する舞台で、誰が上位にくるかわからないですけど、すごく楽しみ」と期待を募らせた。
高橋大輔の演技に感動した幼少期
そんな宇野は10月のインタビューでこう話していた。

「結果を求めることに重きを置くと、ジャンプを頑張らなければならない。『こんなに点数をもらえてしまうんだ』と思ってしまう自分の演技に対して、『もう一度、見たくない』『もう一度見たいと思わない演技』だなということは痛感していた」
その変化の原点は幼少期から憧れを抱いていたフィギュアスケーター・高橋大輔さんの存在があった。
圧倒的な表現力で世界のトップを走り続けてきた高橋さんは、エネルギーあふれるダイナミックな演技で多くのファンを魅了してきた。

「小さいときは高橋大輔さんの演技に本当に感動させてもらって、自分もあんな選手になりたいって。初めて見たのが『オペラ座の怪人』で、すごくそれが記憶に残っています」
“表現力”に注力することを決めた背景には「終わったあとにホッとする時点で違うなって。ジャンプが跳べる、跳べないで出てくるとは思うんですけど、終わったあとに“やりきった!”って思える演技をしたい」という決意があった。

全日本のシンボルとなるメインビジュアルを手掛けた世界的アーティスト・田村大さんは「全身でダイナミックな躍動感を、指先まで神経をとがらせて演技をしているので、余すことなく表現できたら」と、宇野の作品を作り上げたという。
それを見た宇野も指先までピンと手を伸ばし「めっちゃ特徴捉えていますね。指先がまさに僕です。もうそのまま」とうれしそうにしていた。
宇野の代名詞でもある繊細かつ優雅な表現力が丁寧に描かれていると、本人も太鼓判を押した。
感情が前のめりになるような演技を
目前に迫る全日本に宇野自身は「モチベーションも上がっていて、ワクワクする気持ちで試合したい。演技を“こなす”のではなく、感情が前のめりになるような演技をしたい」と意気込む。

「シーズンに入ったときに、『試合に出てよかったな』ってのはあります。僕は周りに支えられてじゃないと、こうしていられないというか、自分の中でモチベーションを見つけようと去年、今年の最初か、いろいろ考えていました。
確かにそのときに言っていたことはウソではないですし、自分のやりたかったこと、やりたかったスケートは確かにありましたけど、一方で勝負事に関して、スポーツとして、フィギュアスケートとして、それも面白さだよねと思うようになって、こう変わりました」
自己満足を掲げる今シーズンはショート・フリーともに新プログラム。
自分の粗いところが出やすいというスローテンポな曲をあえて選択した。

宇野が“世界で一番スケートが上手い”と称えるステファン・ランビエールコーチが振付したショートプログラム『Everything Everywhere All at Once』。
宇野曰く、このプログラムは「ベースになっていて、技術的ではなくチャレンジ的にやっていきたい」ものだという。
「ステファンから言われた言葉で。ジャンプはフリーでトゥループとアクセル。難しいですけど、フリーに比べたら難易度は簡単なので、ジャンプだけでなく、初めからプログラムをストーリーが見えるくらいのレベルで滑り込みたいと思いました。
ショートで細かい点数を追い求めるのは結果だけを見る視点だったとしても、そんなにいいことというか…。
実際フリーで何十点と差が開くので、あまり関係ないかな。ショートは今の状態で、自分がベストと思える表現をすることが、僕が考えているところです」

ずっと宇野が目指してきた、記憶に残り、多くの人を魅了する「小さい頃から憧れたスケート」。
「僕もそういったスケートに憧れていますし、やっと気持ちが競技者としてのメンタルになったのかな。このNHK杯とファイナルを経て思って。
自分が目指したいスケートという競技がどうしても違うって思っていたんですけど、今はその両方を頑張りたいというメンタルになった。ちゃんと結果も求められる状態にしたい。
自分が満足する表現力を、点数にならなかったとしても完成させたい。全日本に間に合うかわかりませんが、メンタルの部分ではすごく良い状態。こういったメンタルで練習をして、どんな演技ができるかは楽しみです」
13年連続出場し、全日本で5度、優勝している宇野。この大舞台で、どんな演技を見せてくれるのか期待したい。
全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
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