「ココで、決める」ことはできなかった。
この記事の画像(31枚)9月24日、来年夏開催されるパリ五輪への出場をかけた戦い、「FIVBパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023」プールBの最終戦が行われ、日本は強豪・ブラジルと対戦。フルセットの末敗れ、5勝2敗で3位に終わり、この大会でのパリ五輪出場権の獲得はならなかった。
ここでは、その激闘の試合内容を独自の写真とともに振り返る。
FIVBパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023 日本対ブラジル(9月24日 東京・国立代々木競技場 第一体育館)
前日に世界ランキング1位のトルコに敗れ、初黒星を喫した女子日本代表(世界ランキング8位・9月24日時点)は最終戦で南米女王のブラジル(同4位)と対戦。ともに5勝1敗同士で、勝った方が来夏のパリ五輪出場権を獲得する「勝つしかない」大一番だ。
ブラジルは五輪で2度の金メダル、南米選手権で23回の優勝を誇るバレー王国。2022年の世界選手権では準優勝、2023年の南米選手権は全勝で制した。日本の眞鍋政義監督も「プレッシャーのかかった試合でこそ強い」と警戒する。
日本のスターティングメンバーは、ここ4試合連続同じメンバー、キャプテン古賀紗理那(27)、林琴奈(23)、山田二千華(23)、渡邊彩(32)、関菜々巳(24)、井上愛里沙(28)、リベロは身長162cmの福留慧美(25)が起用された。
第1セット 日本 21-25 ブラジル
日本はブラジル相手に、今大会アタック決定率1位の井上愛里沙のアタックやチーム最年長・渡邊彩のアタックなどで4連続得点を挙げる。
対するブラジルは今大会6試合中4試合でチーム最多得点を挙げるキャプテンでエースのガビ(29)が存在感を見せる。身長は180cmとそれほど高くはないが、大きく振りかぶった腕から振り下ろされる、独特のフォームで鋭いアタックを次々と決め、得点をあげていく。
日本は今大会アタック決定率3位の林琴奈や古賀紗理那のアタックなどで得点を重ね、一時はリードするも、ブラジルの196cmのジュリア(22)ら高さのある攻撃にあと一歩及ばす。
個々の高い能力を備えるメンバーが融合し、攻守で隙のないブラジルに第1セットを21-25で奪われた。
第2セット 日本 25-22 ブラジル
日本は立ち上がりから7連続ポイントを上げ先行。古賀紗理那のブロック、渡邊彩のブロードも決まり、第1セットとは見違える攻撃で序盤を10-4でリードする。
中盤は、ブラジルの強打とブロックがさく裂。ガビが最高到達点293cmの高さからアタックを決め、ミドルブロッカーのキャロル(32)はポイントが決まると雄叫びを上げる。
ジワジワと追い上げをはかるブラジルに対し、日本は井上愛里沙がアタックやサービスエースを決め、きょうここまでアタック成功率50%の林琴奈も得点。
さらに第1セットで決まらなかったバックアタックを井上愛里沙がここで決め、何とかリードを保ち20-18の僅差で終盤に突入する。
ここで日本は石川真佑(23)を投入。セッターも松井珠己(25)に代わり、松井~石川の流れでアタックを決めチームに勢いをもたらす。
最後は山田二千華が相手コート深くにサービスエース。日本は第2セットを25-22で取り返し、セットカウントを1-1とした。
第3セット 日本25-27 ブラジル
セットカウント1-1(21-25、25-22)で迎えた大事な第3セット。チームの平均身長が175cmと出場国で最も低い日本は、スピード攻撃を展開。
相手に流れが傾きそうな場面でも途中出場の石川真佑が、流れを変えるバックアタック。セッターのトスから1秒以内に素早くバックアタックを決める眞鍋監督の新戦術「マッハとジェット」がここで機能する。
さらに石川真佑はブロックにアタックと得点を重ね、流れを手繰り寄せようとする。
対するブラジルはエースのガビ、196cmのジュリアらがスピードと高さのある攻撃で反撃。
日本とブラジルでサイドアウトを繰り返す展開が続き、終盤まで1点を争う大接戦、21-21となる。
ここで日本はキャプテン古賀紗理那のアタック、山田二千華のサービスエース、林琴奈のスパイクが決まり、セットポイント。
ブラジルはガビの猛攻で24-24のデュースに持ち込むが、日本は古賀紗理那のアタックで再びセットポイント。
一気に決めたい日本はここでキャプテン古賀が痛恨のサーブミス。
再び並ばれたところで、ブラジルが猛攻。最後はジュリアに強烈なスパイクを沈められ、大事な第3セットを25-27で競り落とした。
第4セット 日本 25-15 ブラジル
セットカウント1-2とブラジルのリードで迎えた第4セット。眞鍋監督はキャプテンの古賀紗理那をベンチに下げた。
もう後がない日本。序盤、チャレンジに成功すると、井上愛里沙や林琴奈のアタックで追加点。セッター関菜々巳の多彩なトスワークも決まり、11-4で先行する。
さらに中盤、ブラジルのミスを誘うと、日本得意のしぶとくつなぐバレーを展開。渡邊彩のブロックで20-12とした。
そして終盤、日本はチーム最年少・和田由紀子(21)のサービスエースに始まり、山田二千華のブロックが決まると、最後は石川真佑のアタックで25-15。セットカウントを2-2のタイに戻した。
第5セット 日本 10-15 ブラジル
運命の最終第5セット。このセットを取ったチームがパリ五輪出場権を獲得する。
第5セットは15点先取のスプリント勝負。
序盤ブラジルの連続ポイントで1-4と一気に離される。石川真佑が要所でアタックを決め、10-10の同点に並ぶ。
日本とブラジル、意地と意地のぶつかり合う戦いとなったが、地力に勝るブラジルが最後にもう一段ギアを上げ5連続ポイントでゲームセット。会場に詰め掛けた1万人の歓声がため息に変わった。
日本はフルセットの激闘の末に敗戦。目の前に用意されたパリ行きの切符に、ほんの少し届かなかった。
試合終了のホイッスルが吹かれた時、コート上にいなかった古賀紗理奈は。
「パリへの切符が最大の目標だったので悔しいです。でもこの大会でチームが成長した部分もたくさんあるので、そこを強みにして来年パリの切符をしっかり取って、パリ五輪でメダルを獲れるように頑張りたい」
敗戦の悔しさ、パリ切符が取れなかった悔しさ、コートに立てなかった悔しさ…すべてをにじませつつも、キャプテンは最後に前を向いた。
今回のワールドカップでパリ五輪出場権を獲得したチームは以下の通り。
※( )内は9月24日時点の世界ランキング
プールA:ドミニカ共和国(8位)、セルビア(4位)
プールB:トルコ(1位)、ブラジル(3位)
プールC:アメリカ(2位)、ポーランド(7位)
このワールドカップでのパリ五輪出場獲得はならなかった日本。チームは来年6月の世界ランキングを基に決まる、残り「5枠」での出場を目指すことになる。
FIVBパリ五輪予選/ワールドカップ2023は9月30日(土)からは男子の戦いが幕を開け、石川祐希、髙橋藍、西田有志らの男子日本代表がパリ五輪の舞台を目指す。
FIVBパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023
日本戦全戦をフジテレビ系独占中継!
男子大会:9月30日(土)-10月8日(日)
東京・国立代々木競技場 第一体育館にて開催