義理人情に厚い麻生さん
自民党の麻生太郎副総裁が、内閣支持率の下落が続く岸田文雄首相に対し、「支持率なんて当てにならない」「生きている間は(評価は)気にするな」と励ましたという。
この記事の画像(6枚)19日、派閥のパーティーでの講演でこの話を明らかにした麻生氏は、自分の祖父である吉田茂元首相、盟友だった安倍晋三元首相の祖父、岸信介元首相を引き合いに、「二人とも在任中の評判は最悪だった。退任後に高く評価された」とも語った。
麻生氏は首相時代にはホテルのバー通いを批判されたりしてちょっとかわいそうだったが、安倍政権では「兄貴分」として見守り、岸田政権でもご意見番としてにらみを利かせている。べらんめえ口調で怖いが義理人情に厚い人だ。
確かに岸田内閣の支持率は3か月連続して下がっている。FNNが週末に行った世論調査によると内閣支持率は先月より5ポイント下がって41%、同時期の朝日新聞、共同通信の調査でも同様の結果だった。
岸田おろしにならないフシギ
マイナンバーカードへの政府の対応がとりわけ評判が悪く、ほぼ8割の人が「政府の総点検でも問題は解決しない」と考え、「今の健康保険証廃止の延期や撤回」を求めている。また岸田政権が力を入れている少子化対策についても「期待しない」が66%と、国民は冷淡だ。
岸田氏は9月に内閣改造と党人事を行い、10月に臨時国会を召集するようだ。この臨時国会冒頭に解散も、という話だったのだが、この数字では解散できないのではないか。ただ内閣支持率も政党支持率も下がり続け、マイナカードや少子化対策などの政策の評判が悪いにもかかわらず、党内で「岸田おろし」の声は聞かない。
世論調査で岸田氏に「どのくらい首相を続けてほしいか」と聞いたところ、「自民党総裁の任期が切れる来年9月ごろまで」が最も多く60%。「できるだけ長く」も14%で、「すぐに交代してほしい」は24%だけだった。
どうやら国民は岸田氏のやっていることに文句をつけながらも、しばらくは首相を続けてもいいと思っているようだ。しかも来年9月の自民党の総裁選では、今のところ岸田氏の脅威になりそうな人は見当たらないので、再選も十分に視野に入る。
麻生さんのアドバイスを聞け
マイナカードについては一部の「ノイジーマイノリティー」が大騒ぎし、それに一部野党やメディアが乗っかって騒ぎが拡大するというパターンに陥っているようにも見える。「サイレントマジョリティ」は冷静に見ているので、適切に対応すればいずれ沈静化すると思う。
調査では若者に比べ高齢者がマイナカードに不安を持っている人が多い。「アナログはやめて全部デジタルにします」ではなく、「アナログのままでもいいです。でもデジタルにすると便利です」という説得に切り替えるしかないと思う(台湾はこれでうまくいった)。その分お金はかかるし、利便さは減るかもしれないが、そうしないと日本での普及は無理だろう。
また少子化対策は効果が疑わしいバラマキのために国民負担を増やすことに多くの国民が怒っている。かなりの修正が必要だ。
岸田政権がリベラルであることを批判する人はいる。確かにLGBT法の拙速な成立は、米国や公明党の圧力に屈したようで極めてみっともなかった。だが反撃能力の保持、原発などのエネルギー政策など主要政策では間違っていない。
麻生氏の言うように「支持率は当てにならない」と開き直り、評価は「生きている間は気にしない」と思えば岸田氏はラクに政権運営できるのではないか。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】