世界トップのバレーボール選手が集まるイタリア・セリエA。

そんな最高の舞台で2月5日(現地時間)、日本人対決が実現した。

左:石川祐希、右:髙橋藍
左:石川祐希、右:髙橋藍
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ミラノに所属し、日本代表のキャプテンでありエースでもある石川祐希(27)、そしてパドヴァに所属し、同じく日の丸を背負う髙橋藍(21)による対決は、日本代表のブラン監督も現地視察に訪れた注目のマッチアップ。

石川はチーム2位となる19得点を挙げ、ミラノの勝利(3-1)に貢献。一方の髙橋も、チーム2位の13得点を上げる活躍を見せた。

試合後石川は、髙橋とともに日の丸を囲み写真撮影のファンサービス。日本人だけなく、アジアや現地イタリアのファンで人だかりが生まれると、2人は一人一人と握手を交わしサインに応じていた。

石川が戦う舞台は、言わずと知れたバレーボール界で世界最高峰のプロリーグ、イタリア・セリエA。昨年開かれたバレーボール世界選手権では男子イタリア代表が優勝、世界クラブ選手権もセリアAのペルージャが優勝と、実質世界一のリーグと言っても過言ではない。

そんなハイレベルな環境で石川は今季8年目。日本代表だけなくミラノでもその中心選手としてチームを牽引している。

一体なぜこうした環境で長く活躍を続けられているのか?そこにはどんな努力が隠されているのか?
取材スタッフは、ミラノの石川を訪ねた。

自宅取材で見えた3つの「発見」

ミラノの街中でコンパクトカーを運転しながら移動する石川。まずは歴史ある景観を持つこの街の印象を車中で聞いてみた。

――ミラノは住みやすいですか
住みやすいですね。今までで一番というか、いろんな街に行ってきましたけれど。
トップを目指し続ける環境で僕はバレーボールがしたいので、イタリアがやっぱりいいのかなと思っていますね。

高級ブランドが立ち並ぶミラノの有名スポット・ガレリアや、荘厳な大聖堂が見守る広場を歩いても、すっかり様になっている。

前述の日本人対決の前日に応じてくれた自宅取材。閑静な住宅街でのひとり暮らし。台所には色とりどりのフルーツが並ぶなど、食事に気を使っている様子がすぐに伝わってきた。

そして石川が見つめる先の冷蔵庫に貼られたメモのようなものには、皿洗い20分、洗濯20分、お風呂30分などと手書きで書かれている。

これはいったい何を意味するのか?

「(スケジュールが)時間通りに行かなかったら、それぞれ大体何分かかるなと考えて、試合の日の予定を立てるようにしています。こういう風にやっておけば、時間を無駄にしなくて済むじゃないですか」

生活の中では、毎日当たり前のようにやっている事でも、それをこなしているうちに時間に追われてしまうことはよくある事。そこで石川は日々のルーティンですら、わざわざそれぞれにかかる時間を書き出し、目安にしながらスケジュール管理しているのだという。

かつて石川は毎日「基本的に同じスケジュールにはめて生活をしています」と語っていたが、今も夜12時にはベッドに向かい12時10分には就寝して休息。常にトップコンディションで活躍できている理由の一つが、徹底した時間管理であることがこのメモから伺える。

お尻のボリュームに変化。自宅では欠かさずストレッチ

取材を進めていると自宅のリビングでマッサージ台に寝そべる石川の姿があった。そのかたわらには石川の体を入念に手入れしている人物がいた。

野口:
一緒に挑戦を続けて12年目ですかね。

石川:
長っ…。

野口:
長いですよね(笑)。


石川が高校生の頃から体のメンテナンスを任せている野口嵩広さん。この日は1シーズンに1度行うという、イタリアでのケアに訪れていた。

誰よりも長く石川の体を知る人に、世界で戦う石川の体の進化について聞いた。

――体の中で進化した部分や大きな変化を感じる部分はありますか?
それはもう圧倒的にお尻まわりですね。海外で、自分より高い選手よりも早く打ったり、早く打点を上げる時に、下半身の筋肉が必要になるので、そこのボリュームが増えていくのは高さに生かされていますね。


高く跳ぶにも“より早く”。

身長192センチ。バレーボールのトッププレーヤーとしては決して大柄とは言えない石川にとって、スピードは重要な生命線。

お尻まわりの筋肉が強化され、より早く最高到達点に達してスパイクを打てているという進化が、この日2つ目の発見となった。

さらに自宅取材を続けていると、日課のストレッチがスタート。体が床にぺたりと付き、柔軟性が非常に高い。

「硬ければ硬いほど、曲げる時にストレスがかかって膝が痛くなるとかそういう事があるので、なるべく柔らかく柔軟にしておきます。絶対こういうことをやっていた方が長くプレーできるので」

ストレッチをする際には必ずタイマーを使い、筋肉が伸びるとされている1分以上のストレッチを繰り返す石川。

人一倍柔軟性をキープし、ケガをしにくい体を保つ積み重ねがあるからこそ、激しいプレーが求められるイタリアで戦い抜くことができているのだろう。

チーム練習では仲間を盛り上げる石川の姿が

スケジュール管理・お尻周りの成長・柔軟性という3つの発見を自宅取材で見出した取材スタッフは、チーム練習へと向かった。

するとそこにあったのは、練習中に誰よりも声をだし、チームメートと冗談を言い合い、得点の後には派手なリアクションを見せる石川の姿だった。

セリエAに挑戦した1年目。当時モデナで取材した石川は、意思疎通が難しいこともあり、少しシャイだった。ところが今回、練習取材で見た姿はまるで別人だ。イタリア語での会話も流暢になり、積極的にコミュニケーションをとっていた。

さらにチームキャプテンのピアノが不在の時には、ゲームキャプテンを務めるほどに。15得点を上げた12日のピアチェンツァ戦では、キャプテンマークをつけてプレー。世界最高のリーグで日本人選手がキャプテンとしてコートに立った。

そんな石川はチームメートからの信頼も厚い。特に仲が良いのはセッターのパオロ・ポッロ。
休みの日にはよく石川と一緒に買い物にでかけるという。「ユウキとまた日本料理を食べにいくのが楽しみ」とカメラを前に語った。

そんな石川をチームも高く評価。2月8日にはどの選手よりも早く、契約更新を発表した。

それだけチームから評価をされ、必要とされている証拠でもある。

イタリアの地でさらなるレベルアップを図り、9月に開幕するオリンピック予選に備える石川。最後に今年にかける想いを聞いた。

「パリオリンピックの予選、日本で開催されるということなので、日本のみなさんの前で絶対に切符を獲得します」

世界で戦う上で本当に必要なものとは何なのか。今回の取材でその一端を見せてくれた石川。イタリアで培われた強さが、パリ五輪を目指す重要な舞台で発揮される瞬間を、この目に焼き付けたい。

FIVBパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023
日本戦全試合をフジテレビ系独占中継!
女子大会 9月16日(土)- 9月24日(日)
男子大会 9月30日(土)- 10月8日(日)
東京・国立代々木競技場 第一体育館にて開催