「物価の優等生」と言われる卵に起きた異変。卵の卸売価格は、過去最高の水準が続いている。なぜ高値になっているのか、その実態に迫るともに、おいしい卵を少しでも安く提供したいと奮闘する業者の取り組みを追った。

鳥インフル、物価高で…過去最高値に

「物価の優等生」と言われる卵。その卵の価格にかつてない異変が起きている。

14日、JA全農が価格変動の指標になっている東京地区のたまごMサイズ・1kgあたりの卸売価格を公表した。その価格は335円。統計をとり始めた1993年以降、最高値になった。

この記事の画像(12枚)

その背景にあるのは、鶏の餌代の高騰や、2022年から全国的に流行している鳥インフルエンザの影響だ。特に、鳥インフルエンザでは、全国ですでに1,300万羽以上の鶏が殺処分され、卵の供給数も全国的に減少している。その影響は、鳥取市内のスーパーにも及んでいた。

卵売り場をのぞくと、「鳥インフルエンザの流行の影響でたまごが品薄」と表示されていた。

サンマート湖山店・石原裕一店長:
この通り、がらんとした感じで。なかなかそろえられない。県内のどこの業者もそろえられないみたいで、前みたいな大胆な売り場は作れない

2022年12月の取材では、棚にぎっしりと並んでいた卵。しかし年が明け、2月になると、棚の中段までしか積まれず、売り場は少し寂しい印象だ。

買い物客:
今までだったら、こうたくさんあったでしょ。高くはなったけど、値段には代えられない。健康が一番だから

品薄の影響は、売り方にも。以前は、MやLLなどサイズごとに売られていたが、鳥取県内で発生した鳥インフルエンザの影響で入荷が減り、サイズごとの販売が難しくなったという。

このため、1月からは、サイズがふぞろいの卵を、Mサイズ相当の「バラエティパック」として販売している。販売価格も、Mサイズと比較すると、2カ月前から54円値上がりした。

松尾直明記者:
値段を見ていかがですか?

買い物客:
今見ると高いですね。でも仕方ないです。食べますから、必ず毎日

“卵の自販機”30年の間200円で販売も…初の値上げ

値上がりは、スーパーだけではない。島根・松江市内の直売所を訪れると…。

岡部楓子アナウンサー:
こちらの卵の自販機。約30年間ずっと200円で販売してきたということですが、今回、初めて値上げを行いました

島根・松江市東出雲町に設置されている、卵の自販機。安来市の井上養鶏場から届く「朝どれ」の新鮮な卵がスーパーより安く、手に入るということもあり、この日も、次々と購入客が訪れていた。

購入客は「(養鶏場から)直接、ここに出しているから新鮮だし、安い」「おうち用で、値段も計算したら安いし、大きさも大きい」などと話していた。

約1時間半で完売してしまう人気ぶり。地元の人たちからも愛される卵の自販機だが…。

井上養鶏場・井上純一さん:
本当は値上げしたくなかったが、値上げしないとやっていけない

30年間で初めての値上げに踏み切った。約2万羽の鶏を飼育している井上養鶏場では、毎月100万円ほど支払いが増加。餌代の高騰もまだまだ続く中、次々と押し寄せる値上げの波に頭を抱える。それでも、養鶏場直売のメリットを生かし、スーパーを下回る価格に抑えている。

企業努力で安く提供する会社も

人気の卵の自販機は、鳥取市内にもあった。緑色をベースにしたスタイリッシュな外観で、売り場は入りやすい雰囲気だ。

松尾直明記者:
こちらの自販機、30個600円の商品はどれもからっぽで、売れ行き好調です

卵を買いに来た人:
3日連続で来てるんですけど、今、空の状態でがっくりです。また、あした来ます

こんな大ファンもいる無人の自販機販売は、養鶏などを手がける鳥取市の会社が、4年前に始めた。市内に4カ所あり、年々売り上げを伸ばしている。現在は1日約80ケースを販売。無農薬の餌にこだわった品質の高い卵は、売れ筋が30個入り600円と、決して高価格ではない。

イブキ・伊吹直社長:
飼料代は高騰し、電気・水道・ガスなど基本的な固定費が上がる中、人件費は自販機だとかからない

さまざまな販売コストが上昇する中、自販機による無人営業は、固定の人件費がかからない分、商品価格を抑えられるという。

イブキ・伊吹直社長:
お客さまのことを考えると、できるかぎり安く、求めやすくというのは常に考えている

おいしい卵をできるだけ安く。値上げの荒波の中、卵をめぐる事業者の奮闘は続く。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

鳥取・島根の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。