まだ誰が勝つかわからない

1週間後には日本の新しい首相が実質決まるのに、恥ずかしながら僕にはそれが誰なのかわからない。こういうのは実に気持ち悪い。4人の候補が連日テレビ局をハシゴし「総裁選まつりだ」とはしゃぐ人もいるが、首相の交代というのはもっと「切羽詰まった」ことではないのか。

自民党総裁選は、調査を見る限り河野太郎氏が党員票でリードしているが、各派の動きを見ると議員票を合わせた1回目の投票で過半数を取るのは結構大変なようだ。岸田文雄氏、高市早苗氏が2位3位連合を組めば、2回目の投票の行方はどうなるかわからない、というのが大方の見立てである。野田聖子氏は立候補が告示ギリギリだったので勝負はこれからだ。

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今は中国絡みで下がったが新首相誕生を期待して株が上がったというのもよくわからない。新首相がとんでもないことをやらかして日本をボロボロにしたらどうしようとか心配じゃないのだろうか。「リーダーの差し替え」というのはその国にとっては大きなギャンブルなのに。

総裁選が「おまつり」である理由

自民党総裁選がいつもおまつり騒ぎになるのは日本が「経済一流、政治は三流」と言われた時代の名残だと思う。確かに僕が若い頃は日本が米国をGDPで抜くのかと言われるくらい経済が超一流だったので、政治は三流というのはさすがに言い過ぎでも、「自民党なら首相は誰でもいいや」という気分はあったと思う。だから総裁選は「おまつり」だった。その頃に比べ今の日本経済は残念ながらもはや超一流ではない。だから国のリーダーは強くなければ困る。三流ではダメだ。

ただ総裁選が接戦ということはすなわち「どんぐりのせいくらべ」であり、誰がなっても「弱い政権」が誕生してしまうという可能性が高い。であれば、この後に行われる衆院選は「菅退陣」と「総裁選まつり」のおかげで支持率が上がった自民が優勢かもしれないが、その後はどうなるかわからない。

「悪夢の6年」に戻ってしまう?

安倍-菅コンビの合わせて約9年間は大変強い政権で、いろいろなことを実行した。相対的に野党も弱体化した。

安倍ー菅コンピで合わせて約9年間の強い政権だった

だがその前は安倍(第1次)、福田、麻生、鳩山、菅(かん)、野田と、1年もつかもたないかの弱い政権が6つ続き、その「悪夢の6年」の間、日本は停滞した。今回の菅退陣の際に複数の欧米メディアが日本は短命政権の時代に戻るのではないかという記事を出していたのが気になった。

実は「悪夢の6年」の前は小泉政権が5年の長期政権だったし、その前にはまた短命政権がたくさんあって、さらにその前は中曽根政権が5年の長期政権だった。つまり長期政権と短命政権は交互に来ているので、今度は短命政権の順番なのだ。

長期政権を築いた佐藤栄作氏(左、)中曽根康弘氏(中)、小泉純一郎氏(右)

コロナの第5波はようやく終わったようなので内閣支持率はまた上がるだろう。しかし年末年始には第6波が来るらしいので感染が拡大すると支持率は必ず下がる。そこで新首相が対応を間違えて支持率がさらに下がると、この人で来年の参院選を戦えるのかという話になる。また「○○おろし」である。コロナ禍を乗り切るには相当な政治的腕力が必要だ。候補の4人にそれがあるのか。

だから立憲民主党など野党は埋没してるとかあまり悲観的にならなくてもいいと思う。確かに今回の衆院選は新首相へのご祝儀で苦戦するかもしれないが、新政権の力は未知数だ。何が起きるかわからないので相手が大コケした時にうまく食いつけるように力を蓄えておけばよい。チャンスは意外に早くやってくるかもしれない。長期政権から短命政権の時代に移ったのであれば、日本の政治は安定から混乱に向かいつつある。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】