支持率上がらず菅さんの当てが外れた

先週末に行ったFNN・産経合同世論調査を見てアレッと思った。まず政府のコロナ対策については「評価する」が先月に比べ10P上がり36%になった。ワクチン接種が進んだからだろう。

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これに連動する形で、五輪開催については「中止」が26P減り31%。「開催」は「観客制限」と「無観客」を合わせて68%になった。ここまでは予想通り。

ただ内閣支持率は上がらず、ほぼ横ばいの43%、これは意外だった。ワクチン接種の進み具合に国民には安心感が高まっており、気をつけてやれば五輪も開催できると思い始めている。当然支持率も上がるだろうと菅首相も思っていただろうから当てが外れただろう。同時期に行われた朝日新聞の調査も同じ傾向だった。

ワクチンの接種が進めば感染も収まり、五輪も開催できて国民の気分も良くなる。内閣支持率も上がって、五輪後に解散総選挙で勝利、その後自民党総裁選で無投票再選というのが菅首相周辺の描くスケジュールなのだ。なぜ支持率だけが上がらないのか。

「関係者」ってそんなにエラいのか?

理由は「国民の気分」がまだ良くなっていないことだ。コロナそのものはワクチンのおかげで先が見えてきた。これは一安心。五輪についても開催すること自体は賛成。観客の有無はまだ意見が割れているが、開幕まで一カ月、ワクチン接種がさらに進めば「観客あり」に傾くだろう。

ここまではいいのだが気分が悪いことがいくつかある。まず観客の上限が1万人に制限されたため、会場によっては再抽選が行われる。せっかく当たったチケットが無効になる可能性がある。それはしょうがないのだが、例えば開会式にはチケットを買った一般客とは別に数千人単位でIOC委員、その家族、スポンサーの招待客、各国の競技団体の幹部、政治家らいわゆる「関係者」が入場する。

国民は必死でチケットに応募して、当たったら喜び、外れたら落胆し、キャンセルもリセールもできずひたすら待っているのに、さらに再抽選で行けなくなるかもしれない。だけど自分でチケットも買ってないくせに行く奴らが大勢いる。これは相当気分が悪い。

会場で酒の販売を検討していたというのも、東京では「酒は2人で90分以内」などとヘンテコな制限をつけられ、飲食店も酒飲みもみんなイライラしてる時に聞くと「なんだそりゃ」と思う。俺たちが五輪にも行けず家で自粛してる時に海外から来た「関係者」とやらは五輪会場で酒飲んでるのか?ふざけるな!という話だ。国民の怒りに気づいた組織委は酒の販売は中止にするらしい。

誰か、ちゃぶ台をひっくり返してくれ!

そもそも選手が1万人位来るのはいいとして、それ以外の「関係者」と言われる人たちが数万人も海外からやって来る必要はあるのだろうか。五輪のニュースを見ているとよく監督だの強化委員長だの色々出てくるがああいう人たちは一緒に来る必要はあるのか。選手もいい大人なんだから一人で来れるのではないか。

IOC委員の家族とか、スポンサーの招待客とかすべて今回は遠慮してもらってもいいと思う。海外からの一般客も断っているのだから当たり前のような気がする。

フランスのマクロン、韓国の文在寅両大統領も来たがっているが、特に文在寅大統領については来ても菅首相は会談には応じないのでお引き取り願おう。

選手だけが来日し、自分で切符を買った国民だけが見る、これがシンプルで一番よろしい。もちろん今さら「関係者は来るな」とは言いにくいのはわかっているのだが、こういうちゃぶ台返しが得意な人を実は1人知っている。その人がバッハに一発ガツンとカマしてくれたら国民は相当すっきりするんだけどな。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。