職員:
今現在、(助成金の対象とする従業員は)3人とも有期雇用ということで更新されているというご状況で、お間違いないでしょうか。
中小企業:
正確に言うと、△△さんも最初から正社員、無期の雇用契約書の取り交わしをしています。
職員:
もし無期→正規となる場合には金額が40万円受け取れる制度になりますし。
中小企業:
ただ、△△さんも最初から正社員として無期での雇用ではあったんですけれども、そうでなかったよ、有期だったよという話で今回させていただいていますので。
職員:
そこまでおっしゃっていただけるのであれば、有期から無期、正社員のパターンでの申請ももちろん可能ですのでご安心ください。
中小企業側が自ら「助成金の対象外」であると告げた後も、団体職員は「申請可能」と断言。その他にも内部資料では、様々な企業で、内容の違った同一日付の雇用契約書が確認されるなど、いずれも不正の証言を裏付けるものだった。
「詐欺の“受け子”になってしまった気分」
一方で、不正申請をしてしまった顧客側はどう考えているのか。
団体の指南を受けたという、日本各地の中小企業を訪ね歩いた。製造業、医療関係、整備業など業種はさまざまだが、語られた内容は共通していた。
「経営が厳しく、助成金は喉から手が出るほど欲しかった」「専門家が『大丈夫』と言うから信じてしまった」「不正とは思っていなかった」
その多くが、「団体の指示通りに書類を書き換えた」と説明した。中には自らの責任逃れのため、「不正と知らなかった」と弁明した経営者もいたかもしれない。
だが、ある経営者は怒りをにじませながら、こう漏らした。
「まるで特殊詐欺の“受け子”になってしまった気分です」
本人に不正の自覚はなく、言われるがまま簡単な作業をして報酬を受ける。だが結果的に不正の当事者となるのは自分。そして摘発され、罰を受けるのも自分だけ――。
そんな構図を重ねた言葉だった。
団体主催のセミナーに国会議員も参加
取材を進めると、団体主催のセミナーに、国会議員が出席していたことも発覚した。
出席していたのは自民党の鬼木誠・衆院議員。当時、キャリアアップ助成金を所管する厚生労働省に影響力を持つ、党厚労部会長を務めていて、2月8日の衆院選では福岡2区から出馬し当選している。
セミナーは、衆議院議員会館で実施され、鬼木議員の秘書が、団体と官僚との橋渡しもしていたという。団体の幹部が鬼木議員の政治資金パーティー券を購入していた事実も確認された。
鬼木議員は取材に対し、「秘書と付き合いがあり、例年、会の冒頭で挨拶している」と説明。不正疑惑については「知らない」とした上で、「事実であれば関係を絶つ」と話した。
団体側「不正受給を前提とした助言してない」
こうした事実について、団体を運営する助成金コンサル会社に質問状を送ったところ、数日後、文書で回答があった。
「虚偽の申請や不正受給を前提とした指示・助言を行うことはなく、そのような行為を容認または推奨する方針も存在していない」と不正への関与を否定。助成金申請の際の書類提出の責任は、あくまで事業者自身にあるとした。
政治家との関係についても、「直接的または継続的な関係を有する事実や金銭の支払いの事実は一切ない」という内容だった。
中小企業の前に垂れる「蜘蛛の糸」
物価高や人件費の上昇などを背景に、国内企業の約99.7%を占める中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。助成金が事業継続を左右する重要な支えになっている企業も少なくない。
今回の取材で見えてきたのは、助成金が多くの中小企業にとって、“蜘蛛の糸”のような存在になっている現実だ。経営不振に追い込まれた企業ほど、その糸が救いなのか罠なのかを見極める余裕はない。そこにつけ込み、制度を熟知した「専門家」を名乗る者らが糸を垂らす。
だが、糸が切られたときに落ちるのは中小企業だけだ。
問題の本質は、助成金制度そのものではなく、それを食い物にするビジネスの構造にあるのではないだろうか。公的制度への信頼を静かに蝕むこの“蜘蛛の糸”を、私たちは見過ごしてはならない。
▼情報提供のお願い
調査報道プロジェクト「スポットライト」では「助成金や補助金の不正受給問題」を継続取材しています。もし情報提供して下さる方は、ぜひこちらまでご連絡下さい。
https://www.fujitv.co.jp/spotlight/
