分譲マンションの機械式駐車場の空き問題が社会課題となっている。世帯あたりの自動車保有率の低下やカーシェアの普及を背景に、都心部では空きが目立つ一方、維持管理費は住民の負担として重くのしかかる。
こうした隙間に目を付けたのが、スタートアップの「パーキングラボ」(東京・渋谷区)だ。同社が開発したのは、機械式駐車場に設置できる「トランクルーム」。
2018年ごろから顕在化した空き駐車場問題を背景に、「平面化かサブリースしか選択肢がなかった空間を、もっと柔軟に使えないか」と考えたのが出発点だった。山田智裕社長は「マンションにもトランクルームを置くことで、人々のライフスタイルを豊かにするお手伝いをしたい」と語る。
機械式装置から上昇
トランクルームは横幅およそ2メートル、高さ約1.3メートル、奥行き約0.5メートル。駐車装置1台分のスペースに、こうしたトランクルームを4個組み合わせて設置するのが基本仕様となっている。

二段式や昇降式、エレベーター式など、さまざまなタイプの機械式駐車場に対応できる点も特徴だ。利用方法は車の出し入れと同じで、操作盤を使って必要なトランクルームを地上まで移動させ、荷物の出し入れを行う。使い終われば、再び所定の位置に戻す仕組みになっている。
駐車場の構造や既存設備を大きく変更することなく、空いている区画を収納スペースとして活用できるため、マンション側の負担を抑えながら導入可能だ。
帰宅時に車から荷物を下ろし、そのまま収納して手ぶらで自宅に戻れる利便性が受け、問い合わせは年々増えていて、2021年からの5年間で1都3県のマンションからの相談件数は650件を超える。
だが、開発の過程で立ちはだかったのが法規制の壁だった。現行の建築基準法や消防法には、駐車場内に倉庫などの「建築物」を設置する想定がない。

そこで同社は、トランクルームの底部に車輪を8つ付け、「軽車両」と位置付ける苦肉の策を選んだ。車輪を付けることで建築物に該当せず、既存の消防設備を変更せずに済む。
山田社長は「法をくぐるような形に、正直歯がゆさはある。トランクルームを駐車場活用の一形態として正式に認めてほしい」と制度整備を求める。

火災や安全性への懸念については、動線を限定し、可燃物の持ち込みを管理規約で禁じるなど対策を講じている。これまでに、業界団体や都庁、国交省などの行政機関に申し入れを行ってきたが、現状では制度のお墨付きは得られていない。
駐車場の用途が柔軟に認められれば、住民は高額な維持資金をかけずに空間を活用することができる。規制緩和の必要性について、国交省に取材した。
国交省は慎重姿勢…
機械式駐車場の空きスペースの活用をめぐり、国土交通省は安全面への強い懸念を示している。
機械式駐車装置では、装置内部に人が留まったり、取り残されたりしたことで死傷事故が発生してきた。このため国交省は2016年、「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引きを策定し、適正利用を呼びかけてきた。
柔軟な運用について尋ねたところ、「道路交通法上の自動車を格納することを前提として構造や安全機能等が設計されており、トランクルームとしての利用は想定されていない。さらに、その利用が仮に一定時間内部に利用者が留まることを前提としたものだとすると、事故の危険性が高い利用方法であり、安全対策について慎重な検討が必要」と回答した。
それでも、住民ニーズは明確だ。機械式駐車場は今や「負の遺産」となり、マンション価格が高騰するなかで管理費を押し上げる要因にもなっている。
そもそも機械式の空き駐車場がこれだけ増えた背景は、制度設計にある。
1990年代に路上駐車が問題になった時期に、マンションに一定数以上の駐車場を設けるよう義務づけた駐車場の「附置義務」が国の主導で各自治体に設けられた。この「附置義務」については2026年3月に改正が行われ、柔軟な運用ができるようになったが、すでに設置された多数の空き駐車場は取り残されたままだ。

これから建設されるマンションだけでなく、すでに使われない駐車場を持て余し、「負の遺産」を抱えているマンション管理者や住人をどう救っていくのか。マンションの老朽化や住人の高齢化が進む中、その議論は先送りできない段階に来ている。
(調査報道チーム 阿部桃子)
