2025年の日本への外国人旅行者が史上はじめて4000万人を超え、過去最高となる約4268万人を記録した。コロナ禍への影響で2020年からの3年間は激減したものの、この20年で5倍に急増、さらに増えていく勢いだ。
高市政権はこのインバウンドで税収を上乗せするべく、日本を出国する際に徴収する「出国税」を現状の1000円から3000円に増税することを決定し、オーバーツーリズム対策などに活用する方針を示した。海外旅行者だけでなく、日本人からも出国時に徴収するこの税の増額は国民の利益にかなっているのか。また、税収についてどんな使い方が正しいのか。
コロナ渦の前、第2次安倍晋三政権のブレーンとしてインバウンド戦略を主導し、2020年に外国人旅行者4000万人、30年に6000万人という目標設定に関わったデービッド・アトキンソン氏に話を聞いた。

「日本はオーバーツーリズムではない」

「オーバーツーリズムは日本には存在しません」

アトキンソン氏は開口一番、そう言い切った。その理由をたずねると、次のように解説した。

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デービッド・アトキンソン氏:
理由は2つあって、まず、オーバーツーリズムは、インフラに対して人間の数が多すぎるっていうことなので、マナーが良いか悪いかっていうのは、オーバーツーリズムの定義ではない。マナーが悪いからといって、オーバーツーリズムであるという主張自体が、もう最初から間違ってる。もう一つ問題あるのは、特定のところが、特定の時間帯で混んでるからといって、国全体のインフラがオーバーツーリズムであるっていうことも、大きな飛躍であって、何の根拠にもなりません。一般論としては、世界的にその国民の数に対する、インバウンドの数の割合で判断することが多くて、そうすると、日本の場合は4000万人になったとしても、3割ぐらいで、世界で見ると、だいたい56%の平均になってますので、それにはもう全く及んでいない。

アトキンソン氏は、世界の水準から言えば、日本はまだまだ「オーバーツーリズム」と言えるような状況には至っていないと指摘する。

一般的に先進国の「インバウンド比率」は120~130%と言われている中で、4000万人という日本のインバウンドは全人口の30%程度に過ぎず、これが政府が目標としている6000万人に達してもオーバーツーリズムとは言えないとした。

 また、オーバーツーリズムの定義は「その地域の住民と、訪れている外国人の双方がオーバーツーリズムであると感じること」であり、例えば最近オーバーツーリズムだと言われる京都では、住人に聞いても、訪問した外国人観光客に聞いてもそうは言わない。

つまり日本でオーバーツーリズムと言っているのは、外国人が日本に入ってきていることを良しとしない人たちの飛躍した考えで「煽っているだけ」と主張する。

「マスツーリズム」への対応力

デービッド・アトキンソン氏:
京都ではバスが混んでるとよく言われるが、バスが混んでるのであれば本数増やせばいいだけの話ではないか。外国人旅行者が6000万人になったとしても、日本国民の半分ぐらいにしかならない。オーバーツーリズムではなくて、地方自治体が、「マスツーリズム」に対応ができてないということだと思います。

アトキンソン氏は、地方自治体はインバウンドでメリットを受け取るのだから、デメリットについては「オーバーツーリズム」として国にお任せ、というのは筋違いだと指摘。ゴミの問題があるのであれば、ゴミ箱を設置したり、バスが混んでるのであれば、バスを増やせば良い。観光客のルールの問題があるのならば、それに対して自治体として対処するべきだと言う。日本では夏休みや年末年始に高速道路が渋滞したり、日光のいろは坂では長蛇の列ができる。オーバーツーリズムを主張する前に、まず国内の観光客の「マスツーリズム」の対応を地域が行うべきだと指摘する。