「まるで特殊詐欺の“受け子”になってしまった気分です」
助成金コンサルティング会社が運営する、民間の助成金啓発団体が、不正受給を指南していた疑いが浮上している。

疑惑の助成金セミナーに国会議員の姿

フジテレビは2月11日、この団体が、本来は受給資格のない顧客企業に対し、「書類を書き換えれば助成金を受け取れる」などと指南していたという証言を報じた。
主催する助成金セミナーには、国会議員や官僚らも出席していた。

助成金セミナーで挨拶する自民党・鬼木誠衆院議員
助成金セミナーで挨拶する自民党・鬼木誠衆院議員
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冒頭の言葉は、団体の助言を信じて助成金を不正に申請したと明かした、ある中小企業経営者のものだ。取材を重ねる中で、この一言に、今回の問題の本質が凝縮されているように感じている。

取材のきっかけは、2025年末、記者に寄せられた漠然とした情報だった。

「国の助成金の適正活用を推進する『助成金啓発団体』が不正をしている」

この団体のホームページを見ると、2014年のサービス開始以降、助成金受給をサポートした企業は全国で延べ1万6000社以上。受給総額は173億円にのぼるという。

「本当にこんな団体が? 」半信半疑のまま取材を始めると、ある元職員にたどり着いた。

証言した助成金啓発団体の元職員(手前)
証言した助成金啓発団体の元職員(手前)

その証言は驚くべきものだった。

悪用されているというのは、厚生労働省が管轄する「キャリアアップ助成金」正社員化コース。本来は、非正規雇用の労働者を正社員に転換した事業者などに、1人あたり原則、最大80万円が支給されるものだ。

上段は正式な申請
上段は正式な申請

元職員は、「団体は、受給資格がない事業者に対し、受給資格を持っているように見せかける方法を指南している」と証言した。
主な手口は、雇用契約書や雇用条件通知書の書き換えだという。

不正受給の際に手本として送った書類
不正受給の際に手本として送った書類

採用当初から正社員だったにもかかわらず、契約書を「有期雇用(契約社員)で雇った」と書き換える。その上で、同じ社員を「正社員に転換した」とする書類を作成すれば、書面上は「契約社員→正社員」が成立したと装うことができ、助成金の審査をすり抜ける可能性があるという。

下段は悪用された手口
下段は悪用された手口

労働局から疑義が示された場合には、「最初に作成した“正社員”の雇用契約書が誤りだった」と弁解させ、企業と従業員の間でも口裏を合わせるよう指南していたという。

こうした指南の対価として、団体を運営するコンサル会社は顧客に1件12万円程度を請求。
一方、申請手続き自体は顧客が行うため、表向きの責任は中小企業側に帰する。
元職員は「自分たち団体側は罰せられない構造になっている」と証言した。

「こんなビジネスを野放しにできない」

元職員は1時間以上にわたり、このスキームを淡々と語った。
取材の終盤、なぜ証言に応じたのかを問うと、しばらく沈黙した後こう答えた。

「これ以上、不正に手を染めることはできないから」

自分たちは、顧客に不正を伝えている自覚がある。一方で、中には違法だと気づかないまま、助成金を受給している企業もあるという。「こんなビジネスを野放しにできない。贖罪です」と話した。

証言する助成金啓発団体の別の元職員
証言する助成金啓発団体の別の元職員

その後の取材で、記者は複数の団体関係者の証言に加え、内部資料や通話記録を入手した。そこには、団体職員が顧客の中小企業に対し、不正受給を後押ししていると受け取れるやり取りが複数含まれていた。