秋田・北秋田市の山あいにある集落で、祖父母の畑を受け継いだ女性が、農業と加工品作りを通して地域の活性化に挑んでいる。農家への転身から加工所の開設、そして観光を見据えた新たな展望まで、小さな農園で続く取り組みを取材した。

農業未経験からの転身 地域を守るために

理学療法士から農家に転身した宮本昌子さん
理学療法士から農家に転身した宮本昌子さん
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北秋田市の深沢集落で生まれ育った宮本昌子さんは、かつて大館市の介護老人保健施設で理学療法士として働いていた。

転機となったのはコロナ禍。働き方や生き方を見つめ直す中で、高齢の祖父母が続けてきた畑を「このまま途絶えさせたくない」と考え、2021年に農家に転身した。

祖父母から引き継いだ50アールの畑で40品目以上の農作物を栽培している
祖父母から引き継いだ50アールの畑で40品目以上の農作物を栽培している

現在は50アールの畑で、北秋田市の特産品であるシシトウを中心に、落花生や小豆、サツマイモなど40品目以上を栽培している。

宮本さんは「小さな農家がなくなると山にのまれてしまう」と話し、地域に小規模でも続けられる農業のモデルを示すことで、後に続く人を増やしたいと考えている。

加工品開発で広がる農園の魅力

宮本さんは農産物の販売だけでなく、加工品作りにも力を入れている。

ふかさわファームが販売している『クママス』(左)と『シシマス』(右)
ふかさわファームが販売している『クママス』(左)と『シシマス』(右)

自家栽培のシシトウと粒マスタードを組み合わせた『シシマス』は、2024年の秋田県種苗交換会で農林水産大臣賞を受賞した。

また、阿仁地区のクマ肉と味噌に自家製ニンニクと粒マスタードを合わせた『クママス』など、地域の食材を生かした商品も生み出している。

祖母から受け継いだ『大根のからし漬け』の漬け込み作業
祖母から受け継いだ『大根のからし漬け』の漬け込み作業

さらに、祖母から受け継いだ大根のからし漬けや、サツマイモやカボチャ、小豆を使った焼き菓子など、家庭の味を商品化する取り組みも進んでいる。

クラウドファンディングで加工所を整備

加工品作りを業者に任せるのではなく、「自分の手で加工したい」という思いを強くした宮本さんは、加工所を作ることを決意。

クラウドファンディングに挑戦したところ、目標を大きく上回る約117万円が集まり、2025年夏に小屋を改装して加工所を整備した。

フードドライヤーやオーブンが設置された加工所
フードドライヤーやオーブンが設置された加工所

加工所にはフードドライヤーやオーブンが導入され、干し芋や焼き菓子の製造が可能に。保健所の許可も取得し、漬物や総菜、菓子の販売が正式にできるようになった。

2025年は猛暑で野菜が不作だったが、加工品が収入を補い、農園経営の安定に大きく貢献したという。

観光客を呼び込む農園へ

宮本さんが次に目指すのは、深沢集落を「訪れたくなる場所」にすることだ。

山あいにありながら大館能代空港から近いという立地を生かし、景色を楽しみながら収穫体験ができる観光農園の実現を構想している。

ゆくゆくはふかさわファームを“観光農園”にしたいと語る宮本昌子さん
ゆくゆくはふかさわファームを“観光農園”にしたいと語る宮本昌子さん

「日常を忘れて自然に触れられる場所にしたい」と語る宮本さん。小さな農園から地域を元気にする挑戦は、これからも続いていく。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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