12月29日に31歳の誕生日を迎えられた秋篠宮家の次女・佳子さま。
宮内庁担当になって1年半足らずの記者が同行取材の中で目にした“ニュースには映らなかった場面”を振り返る。
皇室とのつながりも深いブラジル
佳子さまは、今年6月4日から17日まで、国交樹立130周年を記念し、ブラジルを公式訪問された。多くの日系人が暮らすブラジルは皇室との繋がりが深い国の一つで、 上皇ご夫妻をはじめ、陛下や秋篠宮ご夫妻など、これまで多くの方々が訪問を重ねてこられた。
日本からの移民は、神戸港を出発した「笠戸丸」が1908年にブラジルに渡ったのが始まり。以来、26万人が移住。見知らぬ土地で苦労を重ねながら、農業の発展などに大きな役割を果たしてきた。現在は、およそ270万人(2024年)の日系人が暮らしている。
世界の日系人はおよそ500万人で、その中でもブラジルは最多。さらに、ブラジルの国土面積は世界でも第5位。日本と比べると約22.5倍の広さがあり、日系人たちが点在している。佳子さまは今回の訪問では約2週間で8都市を回り、ハードなスケジュールの中で、各地で積極的に交流を重ねられた。
積極的な交流の中でも、筆者の印象に残ったシーンがある。パラナ州・ロンドリーナ市を訪問された時のことだ。ロンドリーナ市の人口は約58万人(2024年)で、ロンドリーナ地域の開拓は1920年代に始まり、コーヒー農園で就労するため1930年代から日本人移住が始まった。ロンドリーナには特に沖縄系の日系人が多いことが知られている。
会場となったロンドリーナ文化体育協会は、2015年に秋篠宮ご夫妻が訪問され、2018年には姉の小室眞子さんも訪れていて、2つの記念碑の近くに、佳子さまの来訪記念碑も新たに建てられた。その後、子どもたちによる沖縄の獅子舞や和太鼓の演奏が披露された。
2曲目には、相川七瀬さんの「夢見る少女じゃいられない」が演奏された。ブラジルの日系社会を中心に行われる日本祭りの中で、和太鼓をバックにJ-POPを踊る「マツリダンス」の楽曲として広く使われているという。佳子さまは曲に合わせて大きく手拍子を送られていた。
演奏が終わると、佳子さまは、手を高く上げ大きく拍手。「皆さんとっても力強くてかっこいいエネルギーあふれるパフォーマンスを見せていただいてありがとうございました。とても嬉しいです」と述べられた。
そして、子どもたちに歩み寄り、「どんなところが好きですか?」「練習は楽しいですか?」などと1人1人と交流された。太鼓を持っていた子どもには、「どのくらいの重さなんですか?」「すごく力が必要ですね」などと声をかけられた。交流の最後には、「まだご挨拶できていない方はいますか?」と細やかな心遣いをされていた。
そのまま、佳子さまは会場を訪れていた人たちと握手で交流を開始された。会場の人たちは、佳子さまを取り囲むような形で楕円形に列を作っていた。
会場には目視で確認できるだけでも数百人が集まっていた。
筆者は列がどこまで続いているのだろうと、カメラとは分かれ、数十メートルほど離れた行列の折り返し地点付近の方まで歩いてみたが、そこにも何重にも人が並んでいた。
すると、すでにカメラ取材は終了していたが、女性を含む3人が3列目あたりの後方で待っていた。
佳子さまが少しずつ歩を進められている。女性たちは、挨拶をしたそうではあるが後方に位置していたので果たして佳子さまは気付かれるだろうかと見ていたら、佳子さまが彼女たちの前の辺りに移動し、佳子さまの方から、手をぐーっと伸ばして彼女たちと握手された。佳子さまはその後も時間の許す限り、握手で交流を続けられた。
後日、この会場の映像を見返した。すると、会場に集まった人たちとの交流の冒頭に、佳子さまは自ら手を伸ばして握手される姿が映っていた。佳子さまは、瞬時に判断しながら手を伸ばしたり前進したりしながら一人でも多くの人と握手し交流しようとされていた。
リオデジャネイロでも、サンバを披露した女の子が佳子さまと交流中に涙ぐむと、佳子さまは、迷わず女の子にハグをされていた。また、サンパウロの学校を訪問した時には、生徒と保護者が手作りしたお菓子などの説明を受け、生徒たちに勧められると、様々なお菓子を試食された。どちらも周囲の人たちには笑顔が広がっていた。
交流を大切にされる姿は日本でも
2024年10月、岐阜県で行われた「陶磁器フェスティバル」に同行取材した時にも交流を大切にされるお姿を垣間見たことがある。
訪問初日には、公募展の受賞作品をご覧になった佳子さま。グランプリ受賞者のウクライナ人の女性が涙ぐみ、佳子さまがハンカチを手渡されたことは報道され話題にもなった。
この時も現場で取材していたが、涙がこみ上げる受賞者に、佳子さまはバッグからハンカチを取り出そうとし、少し開きづらいバッグを懸命に開けられている姿を目にした。
筆者がさらに驚いたのは訪問2日目。
土岐市の「織部の里公園」は日程の最後の場所だった。展示や施設の視察が終わり、カメラの取材も終了。見送りの県知事や関係者らに挨拶をされている佳子さま。そのまま車に乗って出発されると思いきや、佳子さまが1人、外に出てゆるやかな坂を上がっていかれた。
向かった先には、近所の人たちが数人集まり、その中には車いすの高齢男性がいた。佳子さまは少し屈んで話しかけ、周囲の人々にも挨拶をされていた。その時間はおよそ3分。予定に無い交流を終えると、佳子さまは足早に車に乗り込まれた。
佳子さまの出発後、その場にいた近所の人たちに確認したところ、「暑い中待っていただいてありがとうございます」「お元気でお過ごしください」などと声をかけてもらったと、とても嬉しそうに話していた。
国内外の同行取材から見えたのは、行く先々で相手の立場に立たれ、気持ちに寄り添い、その気持ちに応える行動をされていたこと。目の前の人に真摯に向き合われる佳子さまの姿だった。
(フジテレビ社会部宮内庁担当 林理恵)
