逆転無罪の判決。2015年、長野県佐久市で中学生の男子生徒が車にはねられて死亡した事故。「ひき逃げ」の罪に問われた被告の控訴審判決が東京高裁で開かれ、長野地裁の一審の判決を破棄し、無罪を言い渡した。
長野地裁 懲役6カ月の実刑判決
2015年3月、佐久市の横断歩道で当時、中学3年生の和田樹生さんが車にはねられ死亡した。
運転していた御代田町の会社員・池田忠正被告はすぐに救護しなかったとして、救護義務違反・「ひき逃げ」の罪に問われ、2022年11月、長野地裁が懲役6カ月の実刑判決を言い渡した。
この記事の画像(5枚)被告側が控訴「無罪」主張
被告は事故を起こした後、飲酒運転を隠そうと近くのコンビニ店で口臭防止剤を買っていた。
被告側はすぐに戻り救護したとし、「ひき逃げに当たらない」と主張していたが、長野地裁は「飲酒運転の発覚を回避しようとした行為は救護とは対極にある」とした。
判決を不服として被告側が控訴。あらためて無罪を主張していた。
東京高裁「ひき逃げには当たらない」
28日、東京高裁で開かれた控訴審判決。
田村裁判長は「被告がコンビニで口臭防止剤を買って戻るまでの時間は1分余りで、すぐに救護している」「飲酒運転の発覚を免れようとする意志と救護しようとする意志は両立する」とし、「ひき逃げ」には当たらないとした。
そして、一審の判決を破棄し、被告に「無罪」を言い渡した。
両親「樹生にかける言葉ない」
この事故をめぐっては、運転していた男性について、過失運転致死の罪などで2度裁判が行われたが、和田さんの両親は救護義務違反「ひき逃げ」の罪での起訴を求めて独自に調査して告訴。検察はその後ひき逃げの罪でも起訴し、異例の3度目の裁判となった。
判決後、和田さんの両親は―。
父・和田善光さん:
「救護義務違反(ひき逃げ)に当たらないということは考えられません。なぜわれわれの思いというものが司法に届かなかったのか」
母・和田真理さん:
「被害者の生命や体の保護を全く無視した判決。最低の判決です。樹生にかける言葉が見つからないです。こんな国に産んでごめんねとしか言えないです」
一方、東京高等検察庁次席検事は「検察官の主張が認められず、第一審判決が覆されて無罪とされたことについては、誠に遺憾である」「判決内容を十分に検討し、適切に対応したい」とコメントしている。
検察は上告を検討するという。
(長野放送)