兵庫・姫路市にある特別養護老人ホーム「むれさき苑」。ここで日々、多くの人に癒やしと元気を与えている保護猫がいる。茶トラのむーちゃん(オス・推定5歳)だ。

肋骨が折れ、肺に穴が開いた状態で施設へと迷い込んできたむーちゃん。行き場のなかった猫が“施設の看板猫”として活躍するまでの経緯について、保護をしたデイサービス生活相談員の濵口史音さんに聞いた。

「動くのもやっと」だった迷い猫

2023年6月、施設の裏庭にひどく痩せ細り、今にも倒れてしまいそうな様子の猫が迷い込んできた。心配した施設の職員たちは毎日、猫のもとへ訪れご飯をあげたり、寝床を作ったりして回復を待った。

職員がダンボールで作った寝床
職員がダンボールで作った寝床
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当初、動くのもやっとだった猫は温かい看病もあり、徐々に元気を取り戻していく。3日ほど経ったころには、施設の周りをウロウロと歩き回れるように。

しかしある日、いつものように濵口さんが様子を見に行くと、目に飛び込んできたのはぐったりとした姿と、辺りに散らばる血のついた毛だった。

濵口さんが心配になって猫を抱きかかえてみると、あることに気がついた。

「胸の部分が2カ所、パックリと割れていました」