石川県金沢市が2020年にブランド化した“金沢甘えび”。身の大きさや鮮度など厳しい基準をクリアした甘エビだけにその称号が与えられる。そんな、金沢甘えびが店頭に並ぶと次々と買い求める人が店を訪れる。

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「甘いって聞いて買いました。刺身で美味しく食べたいなと思います」

「これは甘エビ。全部自分で捌くから色々忙しいんです」

そんな“金沢甘えび”を漁師たちはどのように捕っているのだろうか。

「生活がかかっているのでものすごくプレッシャーになります」底引き網漁に挑む漁師たち

甘エビ漁の船が出発する金沢港にやってきた。底引き網漁は9月1日に解禁。この日は解禁日、前日の31日午後11時だ。

加藤葵アナウンサー
加藤葵アナウンサー

底引き網漁の解禁に合わせて20隻の船が集まった金沢港。そのうちの1つ、平昌丸の船長が鳥井祥平さんだ。まもなく漁が解禁となるが、今の気持ちはどうだろうか。

鳥井さん:
正直期待と不安で言ったら、不安の方がめちゃくちゃ大きいんですけど。皆さん待ち望んでるものなので、頑張ろうと思ってます。

船員が続々と乗り込み、午前0時の解禁にあわせ、甘エビ漁に向け出港した。

平昌丸も、鳥井さんの操縦で最初の漁場を目指す。

鳥井さん:
今日は風でやりやすい場所で、なおかつこの海流やったらちょっとこんな場所どうなんかなって思うところ。

去年と同じ場所に向かうのか聞くと、鳥井さんは、最近は気候変動が激しいのが関係しているのか、毎年毎年、エビのいる場所が全然違うのだという。そのため、以前はほとんど同じ場所だったものが、ここ5年ほどはこれまでの経験が当てにならないくらい、規則性がなくなっているという。

鳥井さんは、「生活かかっとるんでやっぱものすごくプレッシャーにはなりますね。」と話す。

鳥井さん:
夜出るので、なるべく夕方とか、昼過ぎから寝るようにはしてるんですけど、やっぱりあっちの方がいいかな、こっちの方がいいかなって考えたら全然寝られなくて、きょうも、横にはなってましたけど、全然寝れてませんわ。

「各船の一番鮮度のいい甘エビですね」出航から水揚げまで14時間の格闘

出航から約3時間。最初の漁場に到着。早速、網を海に下ろす。

船はここから1ノット、時速1.8kmにも満たないゆっくりとした速度で、2時間ほどかけて沈めた網を引いていく。

午前6時、沈めた網を上げていく。網には大量の甘エビの姿が…、

船員たちは休む間もなく捕れた甘エビの選別に移る。だいた5から6種類。子持ちかどうかと大・中・小に分けていく。そして、選別した甘えびを箱詰めして作業は完了。この網の揚げ下ろしから箱詰めまで一連の作業を一度の漁で2回から4回ほど繰り返すのが甘えびを水揚げする底引き網漁だ。

出航から14時間後の午後2時、平昌丸が港に帰ってきた。

「お帰りなさい!」

最後は陸上げ作業。箱詰めした甘エビなどを冷蔵庫に運んでようやく漁師たちの1日の仕事は終わり。

そんなとれたての“金沢甘えび”を港で頂いた。

「いただきます。ぷりぷりですね。しかもとろけますね」
「初物です!」
「贅沢です!」

鳥井さんは、「“金沢甘えび”は各船の一番鮮度のいい甘えびですね。時間が経てば立つほど身には甘みが出ますけど、この子持ちの甘えびを食べてもらうときは新しい方が僕はおすすめだと思っています。」と教えてくれた。

加藤葵アナウンサー:
私、初めて食べた甘エビがこの初物なので、もう他の甘えびを食べられないんじゃないかなってぐらい、本当に美味しくて感動しました。
鳥井さん:
ああ、良かったです。そう言ってもらえると嬉しいです。

長い時には20時間以上海の上にいるという過酷な漁。鳥居さんが続けている理由を聞いた。

鳥井さん:
うちのじいちゃんの代から続くこの平昌丸、それをやっぱり自分の代では絶やしたくないし、甘エビ漁は、魚群探知機で魚を見て取るわけではないので、そんな中で自分の思いの場所でそれで魚が入ったらやっぱり嬉しいですね。皆さん、底引き解禁っていうのを楽しみにしてると思うんで、自分としてはこうやって甘エビ漁をして捕ってきたものなんで、是非皆さんのお口に入っていただけたら嬉しいです。

「もう深海のスイーツや」ー金沢甘えびを味わうレストランで彦摩呂も絶賛

この『金沢甘えび』を味わえる店をご紹介する。金沢駅近く堀川町にある「喜はな」である。地元の食材を使った料理が味わえる店だ。

店にはハブイートアンバサダーの彦摩呂さんがお待ちかねだ。

「いいにおいが厨房からかぐわしく…」と料理が待ちきれない様子だが、甘エビ漁の苦労を知って「何時間もかけて海底から引き上げて…食べるのは一瞬だが、漁師さんの苦労があるんだなと、ちゃんと味わって食べないとなと思いました。」と彦摩呂さん。

そうこうしているうちに…「こちら地元の“金沢甘えび”のお造りです」

彦摩呂さん「うわー、綺麗!もう美しい。甘エビのビーナスが横たわってますよ。」

「いただきます」

彦摩呂さん:
うわあ、ちょっとしょうゆをつけて...うわああ!甘えびで彦摩呂が釣れた。釣れちゃった。うわ、美味しい。上品で甘い。もう身がネットリ。ねっとりの粘りが出て、甘いですね。甘いです、神。もう深海のスイーツや!

彦摩呂さんは「すごい美味しい。もう粘りがあって甘みがあってもう鮮度がすごいです。もう全然違うのが伝わる。」と話しながら…、「うわ、ちょっとこの青い卵つけながら。」子持ち甘エビを口に入れると…「うわあ、漁師さんありがとう。」絶賛だ。

ここでは甘えびのお刺身だけでなく、今回、特別なメニューを味わうことができると言う。

店長が持って来たのは…「こちら甘えびの自家製カレー」

彦摩呂さん:
カレー?何、カレーだ。甘えびをカレーにした。うわ、すごい。なんと贅沢な。

なぜ甘エビをカレーにしたのか聞くと、喜はなの田村洋典店長は、「甘エビはやっぱ出汁が美味しいので、それを生かしてカレーにしようと。」と教えてくれた。

「ああ、香りがすごいんですよ。」彦摩呂さん、まずはルーを頂く。

「エビの香りがすごい。うわ、エビ、エビ、エビ、エビ、エビ、エビ、エビ。いただきます。うわあ!すごいエビの香りが溶け込んでいる。これはどうやってこんだけ旨みが出るんですか?」

田村店長は、「甘エビを1度焼いて、それを出汁にしてって形で。使う量も2kgから3kgぐらい使ってます。焼いた殻を粉状にして。」と濃厚な甘エビだしの秘密を教えてくれた。

彦摩呂さん、トッピングの揚げた甘エビにも手をつけて…「揚げたこの甘えびにカレーソースをつけて。もうすごい。もう本当に美味しい…もうエビとインドの国際会議や!スパイスにも負けてないね。エビのお味が。」と再び絶賛。

カレーには甘エビ以外にも加賀野菜や、輪島のしょうゆも使っていて、まさに石川がつまった一皿になっている。ライスも金沢の奥座敷「湯涌」で取れた米だという。

彦摩呂さん「もう、『ザ・石川』がこのカレーの中に全部入ってんですね」

「この時期ならでは、甘エビが出ないとこのカレーができないですもんね。いや、もう本当、甘エビ幸せ!」

金沢甘えび美食めぐりが10月から開催

彦摩呂さんが堪能したメニューは10月1日から楽しめるようになるそうだ。店長に改めて金沢甘えびをどんな風に楽しんでほしいか訪ねてみた。

田村店長:
そうですね。本当に今がちょうど旬な時期になってきますので、子持ちの甘エビなども出てきますので、お造りとかお味噌汁とかカレーとかでも美味しいと思いますので、是非、よかったら皆さん召し上がってください。

この“金沢甘えび”、是非色々な方法で味わっていただきたい。今回、お邪魔した『喜はな』を含め、金沢市内の9店舗で“金沢甘えび”を使ったオリジナルメニューを味わえる、金沢甘えび美食めぐりが10月から始まる。

メニューを見て彦摩呂さんひと言「見て、エビのシンクロナイズドスイミング。ほら、組体操。ほら、組体操してるこれ天ぷらが。すごい。いやー、美味しそう。」

どれも美味しそうなので、是非皆さん金沢市内でこの旬の金沢甘えびを味わってみてはいかがだろうか。

(石川テレビ)

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