2026年を迎えた政界。内閣支持率が3カ月連続で75%超というロケットスタートを切った高市早苗首相は、その人気を維持したまま、新年を迎えた。そして今年、その勢いをどこまで持続し、何を成し遂げるのかが最大の注目となる。
総理大臣就任以来の高市首相について、首相と一定の距離のある自民党議員に聞いても、評価は高く、「思っていた以上にいい総理だよ。過小評価というか、もう少し頑なな人だと思っていたが、柔軟だ」との声が聞かれた。
さらにこの議員は、高市政権になって「政治が動いている」という政策の“ドライブ感”が国民に受けていると分析し、岸田元首相が「静」、石破前首相は「受」であったのに対し、高市首相は「動」で、それが人気の源なのだと分析していた。
2026年は、この高市首相の“ドライブ感”が発展するのか、それとも難題にぶち当たるのか、そしてどこへ進んでいくのかが焦点になると言えそうだ。それを展望するにあたり、まず高市首相の人気ぶりと強みをもう少し詳しく見てみたい。
野党支持層からも好感される高市内閣
FNNの世論調査による高市内閣の12月の支持率は75.9%を記録した。3カ月連続での75%台で、その中でも最高の数字となった。これだけの高水準の支持率が3カ月続くのは異例のことで、女性初ということも含めた高市首相の人柄だけでなく、経済対策や来年度税制改正などの政策が評価された結果と見ていいだろう。
そして、野党支持層以外からの高評価も顕著で、国民民主党支持層の90.2%、立憲民主党支持層でも37.5%が支持している。さらに、対極にあるはずの共産党支持層からも46.5%、高市首相に不満で連立を離脱したはずの公明党の支持層でも48.6%が支持しているのだから、高市首相の個人的人気の大きさもうかがえる。
ある立憲民主党議員は、この高市政権の人気ぶりを前に「能動的に打てる手がない」と自嘲していた。
高市首相の強み(1) 若年層からの熱烈な支持 「明るさ」が受けて「推し活」も
この高市首相の人気と強みを詳しく分析すると、4つほどの要素が挙げられる。1つは若年層からの圧倒的支持だ。FNNの12月の世論調査で、年代層・性別に分けた高市内閣の支持率トップ3は以下の通りとなっている。
10~20代男性 89.4% (9月の石破内閣時 7.1%)
10~20代女性 95.5% (9月の石破内閣時 22.1%)
30代男性 90.0% (9月の石破内閣時 13.2%)
このように、若者層に圧倒的な支持を誇っていて、カッコ内の石破内閣当時の数字と比べると、天と地ほどの違いがあることがわかる。
若者層への人気の理由は、巷間言われているように、高市首相の明るさ、わかりやすい言葉と前向きなメッセージの力。そして、「年収の壁」と呼ばれてきた所得税の控除額引き上げも、現役世代向けの政策実現として12月の高支持率維持を支えたとみられる。
一方で、高齢者に目を転じると、70代以上の女性では支持率69.9%で、9月の石破内閣時とそれほど変わりなく、70代以上の男性だと高市内閣支持は60.4%で、9月の石破内閣時の60.8%よりも低い結果となっている。この層の支持が今後どのように推移するかも、高市政権の行方を左右する。
高市首相の強み(2) 保守層からの支持復活とネット世論バリア
そして、高市政権の強みとして、安倍長期政権を支えたとされる、保守系の「岩盤支持層」が支持層の中核として帰ってきたことも大きい。安倍政権の後継を意識し、「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」と強調したことは、この保守層を中心に広く好感された。特にこの保守層はネット世論における存在感も大きく、ともすれば高市政権への批判の声をかき消すような力を持つこともある。
その強みは、自民党総裁選の時から見えていた。当初本命視された小泉進次郎氏への批判を展開し、高市首相を推す声をSNS上で拡散し続けたことは、党員票の投票に一定の影響を与え、議員票にも心理的影響をもたらしたことが指摘されている。
高市首相への保守層からの期待が、実際以上の評価につながった例としては、中国の習近平国家主席との日中首脳会談が挙げられる。この中で、高市首相は習主席に対し、「台湾海峡の平和と安定の我が国を含む国際社会にとっての重要性」を強調し、「南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念」を表明。台湾問題やウイグル問題についても中国にしっかり直言したとして評価を受けた。
一方で、この会談の1年前に同じく習主席と日中首脳会談を行った当時の石破首相はどう言っていたかというと、「台湾海峡の平和と安定が、我が国を含む国際社会にとって極めて重要である」と強調し、「南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念」を表明していた。
両者の発言は、基本的にまったく同じで、日中の外交当局が今回の首脳会談を前に、高市首相は中国に関する諸懸案に懸念を伝えるが、石破首相の発言の範囲内で行うとの調整を行った形跡が見てとれる。それでも、1年前の石破首相の場合はその後、一部のネット世論から親中派とのレッテルを貼られ、今回の高市首相は言うべきことを言える強い総理大臣だとの評価が広がった。
こうした受け止めや扱いの差が生まれた背景には、高市首相が就任前から、保守的な姿勢を鮮明し、中国に対しても批判的な発言をしてきたことが先入的にもあるとみられるが、こうしたことも政権の追い風になっている部分がある。
高市首相の強み(3)経済政策への期待感
そして、高市人気の要因の中でおそらく一番大きいのが、高市首相が掲げてきた、「積極的な経済政策」と「物価高対策」への期待感だろう。それは世論調査の数字にも表れていて、高市首相の政策のうち最も評価するものとして、最多の4割の人が挙げた。
石破内閣も物価高対策には力を入れてきたのだが、財政事情への配慮が目立ち、思い切った政策はとれず、国民へのアピールに乏しかった。それが高市内閣になり変わることへの期待感、そして高市首相のもとで、ガソリン税の暫定税率廃止も、所得税の控除拡大も実現したこと、このドライブ感に国民が爽快感を覚えたことは間違いない。今後、この期待感が続くかどうかが政権の行方を左右するが、その点は後述する。
高市首相の強み(4)野党バラバラ感の加速
そして最後に、高市首相と対峙する野党のバラバラ感も、強みの1つとしてあげられる。日本維新の会を連立に取り込み、国民民主党とは税制改正をめぐる合意で急接近を演出した。そして参政党や日本保守党には、外国人政策などの共通項をもってシンパシーを寄せる。
こうして、衆議院で約150議席を握る立憲民主党を中心とした野党連携の流れが生まれないようコントロールし、それ以上に立憲民主党以外の野党には、そもそも野党でまとまる気もないとう状態に助けられている部分もあるのが現状だ。
強みは弱み? 2026年の高市政権のアキレス腱は経済か
このように高市政権の4つの強みを見てきたが、こうした強みは、失った途端に当然弱みに変わる可能性もはらんでいる。
岩盤保守層からの支持については、参政党や国民民主党支持層からの支持も含まれ、仮に選挙があった場合に自民党に投票するとは限らないところが弱みではあるが、岩盤と呼ばれるだけに高市首相支持から簡単に離れることは考えにくい。また、若者層からの支持は一過性の部分もあるので、今後一定程度離れる可能性があるのは織り込み済みの部分もあるだろう。
その中で、高市首相のアキレス腱になる可能性があるとするならば、1つは経済と財政の安定が揺らぐ恐れだろう。積極財政に伴う日本国債の信頼性低下の不安、円安傾向の継続による物価高の加速と賃金上昇が追いつかない構図の悪化、利上げによる住宅ローン金利上昇などによる家計圧迫等の危険性が指摘されている。「能動的に打つ手がない」と言う立憲民主党議員も、こうした事態は望まないが警鐘を鳴らしていく必要性は強調している。
自民党内で高市首相を支える勢力の中でも、麻生副総裁ら財政の信頼性を重視する意見は根強い一方、高市首相の周辺にはさらなる積極財政を求める声もある中で、片山さつき財務相と高市首相自身による、絶妙な舵取りが求められる状況は2026年も続きそうだ。
さらに、「年収の壁」見直しによる所得税の減税も、当初国民民主党が掲げたものよりは、縮小され限定的になっており、2026年のうちに国民が思ったよりも恩恵の実感を得られないと失望に変わる可能性も否定できない。
公明党との関係、そして「働いて働いて」への不安
また、高支持率を背景に、自民党内では年内の早期解散総選挙を求める声がある。その際に自民党から見て懸念されているのが、連立を離脱した公明党の動向だ。各選挙区に1~2万票を有すると言われる公明党・創価学会票が、次回の選挙でどう動くかは、高市政権全体の政策と公明党との関係性、そして各候補者のスタンス次第になるのではないかとの指摘が出ている。
一方の野党、特に立憲民主党側は、高市政権の人気が続く中で解散総選挙になった場合、公明党からの支持を得る、あるいはせめて公明党が自民党候補を支持しない状態での戦いに勝機を見いだそうとしている。自民党内から、高市首相の人気が高いうちの早期解散論も出る中、26年の政局の影の主役は公明党ということも言えるかもしれない。
こうして、高市政権の人気と、それが2026年にどう推移していくかを展望したが、永田町で政治家から話を聞くと、与野党そろって高市首相の健康、特に働き過ぎ問題を心配する声が圧倒的だ。年末に高市首相と面会した議員の1人は、「とてもやせていた。精神力で持たせているけれど、体が続くか心配だ」と話している。高市首相の周辺も、懸命に首相の心身の健康管理に気を遣っているが、最後は高市首相自身にしかわからない部分でもある。
このような強みとアキレス腱を抱えながら、2026年の政局に突き進んでいく高市首相。2025年10月の所信表明演説では、慎重な滑り出しも意識し、内容をかなり絞ったという。そうした中で、党内からは日本としてあるべき、より大きな国家観の打ち出しを期待する声もある。1月の施政方針演説で、どんなビジョンを打ち出し、その実現のための経済・外交政策を掲げるのか。そして、連立拡大も見据えた他党との連携や、解散総選挙もにらんだ戦略をどう進めるのか。国民注目の1年がスタートした。
(フジテレビ報道局 政治部長 高田圭太)
