じわり早期解散論 打つタイミングは“安倍流”?

「支持率がこれだけ高ければ、解散総選挙に打って出たくなるんじゃないか」

12月、補正予算の成立にめどが立った頃、現職閣僚の1人がつぶやいた。

高市政権の支持率は報道各社の世論調査で軒並み高い数字となっている。

内閣支持率は75.9%(12月FNN世論調査)
内閣支持率は75.9%(12月FNN世論調査)
この記事の画像(10枚)

FNNが10月の政権発足直後に行った調査で内閣支持率が75.4%となり、12月の調査でも75.9%と高支持率を維持している。

この勢いを受け、自民党内では「党内が明るくなった」という声があがるようになり、「ワクワクするような期待感がある」「自民党から支持が流れていた国民民主党や参政党から支持が戻っている」と高揚感をにじませる議員も少なくない。

しかし、こうした高い内閣支持率が長期間維持されるケースは少なく、自民党幹部の間でも「支持率はこれから間違いなく下がる」との見方が大勢。

そのため、「支持率が下がる前に解散したほうが良い」といった声があがっているというわけだ。

「解散について考える暇がない」と話す高市首相 (12月17日  会期末記者会見)
「解散について考える暇がない」と話す高市首相 (12月17日  会期末記者会見)

高市首相はこれまで「解散について考えている余裕はない」と繰り返し発言し、目の前の物価高対策など政策の実現に取り組む姿勢を示しているが、自民党内には「ないと思わせておいて、あるかもしれない」といった声や、「来年度予算が成立する来年春が1つのタイミングじゃないか」といった憶測も出始めている。

また、あるベテラン議員は「安倍さんは解散のタイミングを間違えなかった。だから長期政権になったんだ。首相はこのことを当然意識しているだろう」と指摘する。

高市首相が「師」と仰ぐ安倍晋三元首相(右)
高市首相が「師」と仰ぐ安倍晋三元首相(右)

高市首相が「師」と仰ぐ故・安倍晋三元首相は、まさに解散権を“有効活用”し、2度の解散を経て異例の長期政権を築いた。

臨時総裁選で選出された高市首相の自民党総裁としての任期は、辞任した石破前首相の「残り任期」にあたる約2年。すなわち、2年後の9月には総裁選が待ち受けている。

高市首相が長期政権を目指すには、この総裁選での再選を見据えながら解散のタイミングを探ることになる。

議員の悩み「高市人気=自民党支持ではない」

ただ、自民党内の「衆院解散」に対する熱が決して高いわけではない。その理由は、「自民党支持率」の低迷だ。

7割を超える高市政権の支持率の一方、自民党の支持率は3割を切っている。

FNNの世論調査で見ても、自民党支持率は、石破前政権時代の9月が28.1%。高市政権発足後の10月は28.1%、11月が27.6%、12月が30.6%と伸び悩む。

来日したトランプ大統領との日米首脳会談(10月28日)
来日したトランプ大統領との日米首脳会談(10月28日)

ある中堅議員も「高市首相の人気が高いからといって自民党の支持が上向いているわけではない。地元では相変わらず政治とカネの問題など自民党への風当たりは強い」と話す。

肌感覚では、高市政権前後でさほど状況に変わりもなく、「高市人気が自民党人気に結びついていない。何をすればそこが結びつくのか、まだわからない」と危機感を抱く議員もいた。

特に若い女性層の支持が低い自民党(党本部 東京・千代田区)
特に若い女性層の支持が低い自民党(党本部 東京・千代田区)

世論調査の結果を年代別で見てみると、特に若い女性層の自民党支持率が目立って低い。

30代以上の女性の自民党支持率はいずれも30%台だが、20代は10.9%、30代は4.0%、40代は23.0%となっている。

ある自民党幹部は「高市首相の人気だけで勝てるほど選挙は甘くない」と指摘し、別の幹部は年末、周囲に対し、こう言い切った。

「高市総理に“早期解散”の考えはない。党幹部の誰もが今の状況で解散があるなんて思っていない」

また、公明党の政権離脱も自民党議員にとって不安要素となっている。

自公連立の解消が決まった党首会談(10月10日)
自公連立の解消が決まった党首会談(10月10日)

「地元レベルでは協力関係は保っている」とする議員も多いが、「蓋を開けてみないとわからない」として、これまで得てきた“公明票”がどれだけ離れるのかといった危機感が募る。

さらに、衆院では少数会派を取り込み過半数の回復を実現させたものの、参院ではいまだ少数与党のままだ。

少数会派に頼る過半数は安定性に欠けるため、解散総選挙を経て自民・維新での過半数を確保するべきとの意見もあるが、「衆院を解散したところで、参院の数が変わるわけではない。いま選挙をする大義もない」との指摘もあがる。

連立政権の火種にも…「選挙協力」の壁

一方、解散総選挙に突入する場合に、難題として立ちはだかるのが自民と維新の「選挙協力」だ。

もともと野党だった維新とは、2024年の衆院選で競合した小選挙区は289の選挙区中155にのぼり、比例復活によって双方が議員として活動する選挙区も多く存在する。

議員定数削減法案の2026年通常国会成立を目指す…高市首相と維新・吉村代表(12月16日)
議員定数削減法案の2026年通常国会成立を目指す…高市首相と維新・吉村代表(12月16日)

現在の選挙制度は、1つの選挙区から1人だけが当選する「小選挙区制」だ。

そこで自民と維新の候補が議席を争う構図が続けば、「連立のパートナー」とは程遠い姿となり、連立政権そのものの火種となる可能性もある。

公明との連立が26年にわたって続いてきた背景には、自民、公明の強固な「選挙協力」があったからにほかならない。

「選挙協力」のもと自公連立は26年もの長きに及んだ
「選挙協力」のもと自公連立は26年もの長きに及んだ

しかし現状、「選挙協力の話は進んでいない」(党幹部)といった状況で、「そもそも衆院選ができる状況じゃない」(若手議員)との声も漏れる。

「小選挙区での勝者を優先すればいい」という意見もあるが、例えば維新の“お膝元”大阪では15の選挙区で自民が維新に完敗している。

そうなれば「大阪では自民は1人も擁立できなくなる」(党関係者)と不安の声があがる。

日本維新の会・中司宏幹事長
日本維新の会・中司宏幹事長

維新の中司幹事長は14日、解散は首相の専権事項だと前置きしながらも、連立合意文書に明記された議員定数削減など「12項目」について触れ、「そこに手を付けずに解散するのは厳しい。腰を据えて政権運営に取りくんでほしい」と述べている。

議員定数削減法案の成立の可否は通常国会に先送りされ、維新が“絶対条件”としている「副首都構想」の法制化に向けても自民、維新の間で「どの地域を副首都にするか」をめぐり考えに隔たりがある。

支持率と2年後の総裁選、維新との連立の行方、こうした要素が複雑に絡み合う中で、高市首相が来年の間に解散を打つのかどうか、判断が注目される。

(フジテレビ報道局政治部 与党担当 伊地知英志) 

伊地知英志
伊地知英志

フジテレビ報道局政治部・与党担当記者。2022年フジテレビに入社し、2024年7月より政治部で自民党総裁選や衆議院選挙、公明党などを取材。
趣味は筋トレ、スノーボード、読書など