鹿児島・種子島宇宙センターからH2Bロケットが打ち上げられていた頃、国際宇宙ステーションに機材や食料を運んでいたのが「こうのとり」の愛称で親しまれた無人補給機、HTVだった。その後継機となる「HTV-X」1号機が、2025年10月21日、H3ロケット7号機で鹿児島・種子島宇宙センターから打ち上げられることが発表された。

9機連続成功「こうのとり」の後継 積める荷物が大幅に増加

日本の新型宇宙輸送船「HTV-X」1号機は6月2日、種子島で報道陣に公開された。総開発費約356億円。国際宇宙ステーション(ISS)に機材や研究資材、それに食料や衣服など多彩な物資を運ぶミッションを担う無人の宇宙輸送船だ。2009年に1号機が打ち上げられ、2020年まで9機連続でミッションに成功したこうのとりの後継機としてJAXA、三菱重工などが共同開発している。

種子島宇宙センター(6月2日)
種子島宇宙センター(6月2日)
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重さ約16トン。全長約8メートル、直径約4.4メートル。大きさはこうのとりとほとんど変わらないが、機体の軽量化に成功したことで、積載できる物資の量は1.5倍ほど増え約5.85トンとなった。

単体での飛行も可能 ISS離脱後も3つのミッションこなす

こうのとりから進化した点はほかにも。

「与圧カーゴ」と呼ばれる、物資などを載せる部分には電源供給機能が追加された。物資を積み込むことができるタイムリミットも、こうのとりは打ち上げ90時間前だったのが、HTV-Xは打ち上げ24時間前と、大幅に短縮された。これにより、生鮮食料品や、鮮度が重要な実験サンプルも搭載できるようになった。

日本の新型宇宙輸送船「HTV-X」1号機
日本の新型宇宙輸送船「HTV-X」1号機

それだけではない。こうのとりは、ISSから切り離されて3日ほどで大気圏に再突入し、燃え尽きていたが、HTV-XはISS離脱後、最長1.5年は単体で飛行することができる。この特性を生かし、1号機では、ISSから切り離された後も、単体で飛行しながらのミッションも計画されている。

まず、ISSより高度を上げ、環境観測などを行う超小型人工衛星を宇宙空間に放出するミッション。次に、地上からのレーザー光を機体に装着したリフレクターで反射させ地上で測定するミッション。宇宙を漂うロケットの破片など、宇宙デブリと呼ばれる「宇宙のごみ」の観測、ひいては除去計画策定に役立てようという狙いがある。そして宇宙空間で軽量パネルを展開し、パネルに設置されたアンテナで地上からの電波を受信する実験、さらには次世代の宇宙太陽電池の実証実験。これらは将来、太陽光発電システムのような大型構造物を宇宙空間に無人で構築する技術につなげようという壮大なミッションだ。

超小型人工衛星を宇宙空間に放出するミッション(イメージ)
超小型人工衛星を宇宙空間に放出するミッション(イメージ)

「新しいレガシー確立を」担当者も成功に自信

JAXA新型宇宙ステーション補給機プロジェクトチームの伊藤徳政プロジェクトマネージャは「HTV―Xは、大量のカーゴが搭載でき、ISSを離れても違う目的で利用できるのが強み」と胸を張った。そして、開発の段階で細かい不具合はあったとしながらも「1号機はほぼ完成し打ち上げを待っているところ。確実に成功させると自信を持って言えると思うが、こうのとりに引き続き、HTV-Xとしての新しいレガシーを確立していこうという意気込みが、非常に強い」と、ミッションの成功に自信をのぞかせた。

ついに打ち上げ日が発表されたHTV-Xの1号機。ロケット本体も、これまでと仕様が若干異なる。第1段に液体燃料のメインエンジン「LE-9」を2基搭載するのは変わらないが、本体の脇に装着される固体燃料の補助ロケット「SRB-3」は2基から4基に増えよりパワフルな仕様となっている。

種子島から宇宙へ。世界の宇宙開発、研究を支える大きな役割を担うHTV-Xの初ミッション成功が、今から楽しみだ。

(動画で見る:「HTV-X」1号機を初公開 日本の新型宇宙輸送船 国際宇宙ステーションに物資を輸送

鹿児島テレビ
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