ポルシェを買ったのに、公道を走れない――。そんな信じがたいトラブルが法廷で争われた。
東京都の男性が中古車販売会社から購入したポルシェには、車検を通るために必要な装置がついておらず、公道を走ることができない状態だった。東京地裁は9月、契約を取り消すことができると判断し、販売会社に購入金額1300万円超の返還を命じた。
納車で耳を疑う言葉
流線型のボディーが特徴のポルシェ911。あの名車がついに手元に届く。
そんな高揚感のなか、車両を届けに現れた販売会社の担当者から告げられた言葉に男性は思わず耳を疑った。

「この車にはキャタライザーが付いていません。ECUにも分解の形跡があります」
キャタライザーとは、排気ガスを浄化する装置で、日本の公道を走るには不可欠な部品。つまりそれがない車は車検に通らず、違法状態となる。
ECU(エンジンコントロールユニット)は、車の心臓部ともいえる電子制御装置で、エンジンの動作や燃料の噴射などを管理する重要なパーツ。分解の形跡があるということは、性能や安全性に影響が出る可能性がある。

「車検のときだけ装着すれば問題なく通せます」
担当者はそう説明したが、そんな話は契約前に一度も聞いていない。男性は戸惑い、苦情を伝えたが、車はそのまま引き渡された。
男性は、その日のうちに担当者に「キャタライザーが付いてないということは違法状態で購入したことになりますので、早いうちに正しく装着していただきたく、よろしくお願いします」とメールで訴えた。
なぜこんなことが起きてしまったのか。
正規ディーラー取扱のはずが…
男性がこの中古車を見つけたのはインターネット上の販売サイトで、「ポルシェの正規ディーラーの取扱車」との旨が紹介されていた。問い合わせると、担当者から「1350万円ほどでお乗り出し頂けます」と返信があった。
7月、横浜市にある整備工場で実車を確認。その場で見積書を受け取り、3日後にはショールームを訪れて試乗した。
販売価格は計1355万円。登録手続きや希望ナンバーの取得、納車前整備などが含まれていた。
だが、キャタライザーが付いていないことは明記されておらず、契約前のやりとりでも説明はなかったという。