政府の準天頂衛星「みちびき6号」を搭載したH3ロケット5号機が打ち上げに成功した。現地では見学者や関係者が成功を喜ぶ姿が。このH3、実は“異なる3つの顔”を持つ。JAXAでは3つをそろってデビューさせるのが悲願だとして、次のステップに歩みを進めている。

H3ロケット5号機の打ち上げ成功

2025年2月2日、午後5時30分。鹿児島・種子島宇宙センターからH3ロケット5号機が宇宙へと飛び立った。

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機体はすぐ雲に隠れてしまったが順調に飛行を続け、打ち上げから約30分後、搭載していた政府の準天頂衛星「みちびき6号」を予定の軌道に投入、打ち上げは成功した。H3としては4機連続の打ち上げ成功である。

宇宙センター近くの公園には多くの人が訪れ、打ち上げの瞬間を見守った。ロケットが上昇を始めると拍手や歓声が上がり、空を見上げてロケットに手を振った。

NASA(アメリカ航空宇宙局)のエンブレムがついたジャンパーを着た見学者は「最後まで見られて成功してよかった」、「感動して涙が出る」と声を詰まらせる人もいた。

「みちびき」は「日本版GPS」とも呼ばれ、カーナビやスマートフォンの位置情報の提供や地震や火山など災害時の情報発信にも役立てられる。日本上空に長い時間滞在するため変則的な8の字を描く「準天頂軌道」を回る衛星と、赤道上空にある「静止軌道」の、計4機体制で運用されているが、政府は2025年度中にさらに2機を打ち上げ、最終的には7機体制にする予定だ。

国の重要なミッションが続くH3ロケット。打ち上げ後の記者会見でJAXA・山川宏理事長は「連続成功の意義は大事だがさらにこれから、引き続き着実に打ち上げていく。それによりどんどん信頼を積み重ねていく」とコメントした。

H3ロケットの3つの形態とその特徴

ところでH3ロケットは3つの“顔”を持つことをご存じだろうか?

現在のH3は「2-2形態」と呼ばれるタイプ
現在のH3は「2-2形態」と呼ばれるタイプ

まず、今回の5号機まで4機連続で成功している「2-2形態」と呼ばれるタイプ。1段目に液体燃料のメインエンジン「LE-9」を2基搭載し、両サイドに「SRB-3」と呼ばれる固体燃料の補助ロケット(固体ロケットブースタ)を2基装着している。

(C)JAXA
(C)JAXA

2つ目はSRB-3を4本装着した最もパワーの強力な「2-4形態」。国際宇宙ステーションに物資を運ぶ「HTV-X」の打ち上げに利用される予定だ。

そして3つ目が「3-0形態」。SRB-3はなく、メインエンジン「LE-9」が3基搭載されている。打ち上げ能力は多少下がるものの最もシンプルでコストも安いタイプだ。

より低コストで打ち上げることで国際的宇宙ビジネス市場への本格参入を目指すH3ロケット。2月2日の会見で、JAXAの有田誠・H3プロジェクトマネージャは「3つのラインナップをそろえてデビューさせるのがある意味悲願。3つのバージョンをそろえることでいろんなお客様にH3を使っていただける大きな一歩になるのでは」と展望を述べた。(2-2型はロケット先端にある衛星を格納する「フェアリング」の大小でさらに2つに分けられる)

炎が見えないかも?3-0形態にも期待

内閣府の宇宙基本計画工程表などによると、2025年度には「3-0形態」のH3ロケットの打ち上げが実施される予定になっている。その「3-0形態」について有田プロジェクトマネージャから「(打ち上げ時の状況が)どういう風に見えるのか私自身楽しみ」という、興味深い発言があった。

有田プロジェクトマネージャ
有田プロジェクトマネージャ

有田氏によると3-0形態は日本の大型ロケットとしては初めて、固体ロケットブースタなしで打ち上げられる。実はロケット打ち上げ時に見えるオレンジ色の炎は、ほとんどが固体ロケットブースタの炎だ。一方有田氏は、液体水素を燃料とするLE-9から排出されるのは「ただの水蒸気」と説明する。つまり3-0形態のH3ロケットが飛行する時、オレンジ色の炎はほとんど見えないのでは?というのだ。

その上で有田氏は、いずれのパターンも「(H3の)機体自体は4機連続で成功し安定した物の延長線上にある」としながらも、「H3全体としては開発道半ば。引き続き気を緩めることなくしっかり磨いていきたい」と、気を引き締めた。

初号機こそ第2段エンジンが着火せず失敗に終わったものの、その後は順調に実績を重ねているH3ロケット。鹿児島だけでなく国内、海外で多くのファンが成功を期待する中、一層の飛躍を期待したい。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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