東日本大震災発生から14年7カ月を迎える中、宮城県警は10月9日、2023年2月に宮城県南三陸町で発見された遺骨が、東日本大震災で行方不明となっていた岩手県山田町の当時6歳の女の子、山根捺星さんのものであることを発表。娘が見つかったことを受け、母親が岩手めんこいテレビの取材に応じ「帰ってくるまで一人で寂しい思いをしながらいたんだろう。本当におかえりなさい」と我が子への思いを語った。

「まさかの連絡でうれしい気持ち」

身元が判明したのは、震災当時6歳だった山田町の山根捺星(なつせ)さん。

捺星さんの遺骨は、2023年2月、南三陸町にある建設会社が歩道橋の補修後に行った分別作業の際に見つかり、警察が身元の確認を進めていた。

宮城県南三陸警察署
宮城県南三陸警察署
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警察がDNA鑑定などを行った結果、捺星さんの下あごの骨の一部だと判明した。

母親の山根千弓さん(49)が10月9日、岩手めんこいテレビの取材に応じた。

母・千弓さんは、「うれしいです、やっぱりね。見つからないって諦めていたので、まさかの連絡でうれしい気持ちと、連絡が来たあと、ニュースでやっているのを見て、ちょっと寂しくなりつつもあります」と複雑な心境を語った。

“あの日”の記憶

Q:当時の状況を聞かせてください。

母・千弓さん:
(捺星は)6歳で、4月から小学校に入学する予定でした。ちょっと自閉症があって、町でやっている障がいの子どもたちを集めた教室が月1回あるんですけれど、その教室の最後の日だったんです。それで卒業証書みたいなものをもらいに午前中行った。

午後は私は仕事に行って、保育所を休ませたので、おばあちゃんと捺星だけ家にいたんです。
その後、地震が来て…津波が来て。ちょっと逃げ遅れたっていうか…。
まさかここ(家)まで津波が来るっていう頭も多分なかったのかもしれないですよね、おばあちゃんからすれば。

山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)
山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)

母・千弓さん:
でもおばあちゃんは、自力でどうにか流れてきたものに捕まって、後から駆けつけた旦那とおじいさんに助けられて。

その後、火事が起きたので、もう、どうしようもできなかったんです。
次の日の朝に様子を見に行ったけれども、どうにもできない、近くにも近寄れない状態だったので、遠くからただ眺めているだけ。

たぶん、その瓦礫の下にいるのかなという思いでいたんですけど、全然瓦礫を片付けても見つからないし、すっかり焼けちゃって粉々になっちゃったのかなという思いでずっといたんです。
なので、まさか宮城県まで行っているっていうのは、全然想像がつかなかったです。

予想外の場所で発見

Q:警察から連絡がきた後は?

母・千弓さん:
連絡が来たのは9月30日。(警察からの電話は)旦那が出たんです。旦那の携帯に連絡が来た。
「山根捺星さんが見つかりました」って言われたと言っていました。

その後、私に泣きながら電話が来たので、私はもうてっきり、「施設に入っているばあちゃんが亡くなったんだ」っていう思いが先に出てきて…。
警察から連絡が来たって言うので、(捺星が見つかったと)聞いて本当にびっくりしました。

その後、警察の方が家に来て、捺星の写真も見せましたし、見つかった骨の写真も見せられました。
なんか…切なかったですよね、やっぱりね…
なんかね…ほんと「えーっ」ていうね…
本当によく見つけてもらったなっていう、そんな思いです。

山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)
山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)

Q:施設にいるおばあさんにも伝えましたか?

母・千弓さん:
よかった、よかったって言っていましたね。(捺星の)手を離してしまったから、やっぱり心の中で引っかかるものはずっとあったと思います。なので、よかった、よかったって泣いていましたね、電話口で。

「おかえり、捺星。よく頑張ったね」

Q:震災からまもなく15年経つが大きくなっていれば21歳ですが…

母・千弓さん:
全然想像がつかない。当時も自閉症も…ちょっと遅れていたので、全然会話ができなかったんです。なので、大きくなってある程度会話できていたかなと。

当時の姿のままからだと全然想像もつかないんだけど、会いたかったよね、やっぱり、誕生日が来るたびに。生クリームのケーキが大好きだったので、毎年買ってお供えして。
どんなだったかなっていうのを想像を巡らしてみましたね。

山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)
山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)

Q:一番の思い出は?

母・千弓さん:
やっぱり喋れなくても、「ママ、ママ」っていうのは言えたので、呼ばれたりとか、その時かなぁ。

色々いっぱいあるんですけどね、やっぱり楽しそうに笑っている姿を思い出します。

山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)
山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)

Q:お母さんのもとに帰ってきたらなんて声をかけますか?

母・千弓さん:
「おかえり」ですよね。おかえりですよね、本当にね。捺星、よく頑張ったねっていう感じです。
帰ってくるまで一人で寂しい思いしながらいたんだろうなって思うと、本当に「おかえり」って感じです。

山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)
山根捺星さんの写真(母・千弓さん提供)

千弓さんは当初、月命日である10月11日に遺骨を引き取りに警察に赴く予定だったが、体調を崩したために日を改めて迎えに行くと話している。

岩手めんこいテレビ
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