半蔵門前の交差点で起きたこと
天皇陛下は11月28日、前立腺の組織検査を終え、東大医学部付属病院から皇居へと戻られました。
皇居・半蔵門に陛下の車列が近づいたとき、緊急車両、救急車がサイレンを鳴らしながら半蔵門方向に近づいてきました。
この記事の画像(15枚)その様子を含め、皇室の方々の交通事情を記したいと思います。
天皇陛下の車列は、内堀通りを九段方面からやってきました。
半蔵門でお迎えしようとして私は、まず、車列の安全確認するため先行した白バイの姿を認め、まもなく車列が門に到着すると感じました。そのとき、新宿通りの四谷方向からサイレンが聞こえ、救急車が近づいてくることが分かりました。
このままいくと、救急車と車列がほぼ同じ時間に半蔵門前の交差点に進入する可能性が出てきたのです。
すかさず、麹町警察署員が道路に出て、「緊急車両を行かせます」と言い、交差点内で救急車の誘導を始めました。
陛下の車列をよく見ると、先頭の白バイを含め車列そのままで、内堀通りで停止しているように見えました。
そして、救急車は、警察官の誘導に、ちょっと戸惑ったかのようにスピードを落としながら交差点に進入し右折。日比谷方向へと走り去って行きました。
その後、車列は走り始め、何事もなかったように半蔵門へと左折。陛下も車中から沿道の人へと手を振り、門の中へと去られました。
警察官も車列にいる警備担当者と救急車を先に行かせる連絡を取り、スムーズに誘導したものと思われます。
緊急車両がきた場合には、車列よりそちらを優先させるという考え方が、警察などの警備担当者ともよく共有されていることが良く分かるシーンでした。
皇族の車列と緊急車両がかち合ったら…
このように車列と緊急車両がかち合う場面はたまに見られます。
2019年6月、全国植樹祭のため愛知県を訪問されていた天皇皇后両陛下。
会場へと向かう両陛下の車列の後ろから、サイレンを鳴らした救急車が迫ると、車列は左側に寄り一時停止して、救急車を通過させたのでした。
こうした行動は、上皇さまがご在位中にもあったと聞いています。
国会の開会式に向かおうと桜田門を出ようとした車列は、緊急車両のサイレンを聞き、公道に出るのを止め、緊急車両を先に行かせたということです。
そもそも、道路交通法第40条では「緊急自動車の優先」が示されていて、
交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両(緊急自動車を除く。以下この条において同じ。)は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となつている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあつては、道路の右側。次項において同じ。)に寄つて一時停止しなければならない。
とされています。
つまり、両陛下も上皇ご夫妻も、人命優先はもちろん、法を守るお気持ちからも緊急車両を優先されていると考えていいでしょう。
皇族の車列も交通法規を守る
車列は法を守る。
この考え方は信号機でも同じです。
両陛下の車列は、交差点の信号機が青なのでそのまま通過します。もちろん警察が信号機を操作するから青なのですが。
一方、他の宮家の方々の車両はと言うと、赤信号で止まります。信号操作は行われていないのです。
当たり前のようですが、知らない方もいらっしゃるかと思います。
先導する車も通常はおらず、皇族方が乗る車とその後ろの警備車両、2台で動かれるケースがほとんどです。
こんなハプニングも…
以前、私が遭遇した話ですが、式典を終え、建物から車に乗り敷地内を出られるところを、私はお見送りし一礼したところ、皇族の方からも車内から会釈をいただきました。
皇族を乗せた車はそのまま公道へと入り走り出しました。
取材を終えた私は、駅へと向かうため歩道を歩いていたところ、すぐそばの赤信号で停止している皇族を乗せた車に追いついてしまったのです。
車両も赤、歩道も赤。
私は、またも歩道から皇族の方に一礼。皇族の方もご会釈。
「早く青になって、車に走っていってほしい」と、なんとなく居心地の悪い時間を過ごした思い出があります。
話はそれましたが、天皇皇后両陛下はもちろん、皇族方も道路交通法を守り、車で移動されているのです。
【執筆:フジテレビ皇室担当解説委員 橋本寿史】