秋田市の視覚支援学校で、児童生徒が校内に寝泊まりして防災について学ぶ「防災キャンプ」が行われた。学校が避難所になったとき、水害で避難が必要になったとき、自分はどう行動したらいいのか。子どもたちにとって学びの多い体験になったようだ。
視覚支援学校生が初の宿泊体験
秋田市にある県立視覚支援学校で6月、小・中学部の児童生徒5人が、学校に寝泊まりして防災を学ぶ「防災キャンプ」に挑戦した。

校内に宿泊するのは初めての取り組み。学校の体育館が避難所になったという想定で、様々な場面や行動を考えた。

先生は、防災教育の専門家で日本赤十字東北看護大学介護福祉短期大学部(秋田市)の講師・及川真一さんだ。
及川さんははじめに、「避難所は、私たちが“場所をお借りする”もの。ということは、自分たちで何かを持ってきて協力し合わないと、その空間は変わらない」と子どもたちに伝えた。
自ら考え動く テントやベッド組み立ても
子どもたちは体育館にあるもので、一から避難所設置の準備を進める。

男女のスペースを分けるためのパーティションを用意したり、体育用のマットで寝床を作ったり、児童生徒が自ら考えて動く。
避難所の設営を始めてから40分、救援物資が届いた。段ボールベッドや組み立て式のベッド、テント、調理器具、食料などだ。

子どもたちは協力して手際よくテントを組み立てていった。
避難所で欠かせないのが、避難してきた人たちが休息をとる場所。一般的に使われるのは段ボールベッドだ。

子どもたちは先生の手も借りながら複数の段ボールを組み合わせてベッドを作っていった。
アウトドア用の簡易ベッドも活用が広がっていて、寝心地を確認した児童は「最高」と話していた。

児童生徒は救援物資で昼食をとったあと、調理場や水のタンクなどを設置。そして、夕食を済ませると夜の校内を探検して眠りについた。
大事なのは“経験の積み重ね”

一夜明けた翌日の朝、及川さんが「一生懸命避難所を作ってどうだった?」と問いかけると、子どもたちからは「楽しかった」という答えが返ってきた。
また「一晩過ごしてみて、こういうふうにしたほうがいいな、こんなふうに変えたほうが良かったかな、と考えることはできた?」と尋ねると、1人の子どもが「はい」と返事をした。

及川さんは「そういったことの積み重ねをしていくと、避難所はとても良いものになっていくので、すごく良い経験をしたと思う」と子どもたちに語りかけた。

6年生の児童は「体育館に普段泊まることがないので緊張した。ベッドの寝心地はとても良かった。いろいろなことを学んでこれからも生かしたい」と話した。
水害時は長靴ではなく“靴”で逃げる
防災キャンプ2日目は水害時の避難を体験した。
体験を前に、及川さんは「きょうの経験で『こんな状況で逃げるのは本当に困るんだ』ということを知れば、より一層『早く逃げよう』と言いやすくなる」と体験の重要性を伝えた。

想定は「大雨で冠水した夜の道路」。たらいを沈め、ブラシやバケツを浮かべたプールに入った児童生徒は、アイマスクをつけ、白杖を手に、いつも履いている靴でプールの中を歩いた。

その後、靴を長靴に履き替え、同じように歩いてみた。
「どうだった?重たいでしょ」と及川さんに聞かれた子どもは「水の抵抗がすごかった」と答えた。
雨が降ると、どうしても履物は長靴をイメージしがちだが、及川さんは「長靴で避難するとなると、中に水が入ると歩きづらくなる。転んでしまうかもしれない」と話し、「水害で避難する時は“靴”」とアドバイスした。
5年生の児童は「楽しかった。水の抵抗がすごくて、洪水の時は長靴ではなく靴が良いと分かった」と学びを深めていた。

県立視覚支援学校の銭谷寿教諭は「障害がある人の家族は、避難所に居られなくてまた自宅に戻るケースもよくある話だと聞くので、そういうことではなく、子どもたちも主体的に避難所の運営に関わっていけるような大人になっていければいいと思う」と語った。

1泊2日の防災キャンプ。緊張の中でも楽しむことができた体験は、災害時、きっと子どもたちの力になるはずだ。
(秋田テレビ)