7年ぶりに噴火した新燃岳は、その後の火山活動の低下により、10月には噴火警戒レベルが2に引き下げられた。火山灰による実害はほとんどないにも関わらず、SNSなどでの誤った情報拡散により、宮崎県高原町では観光業を中心に深刻な風評被害が発生している。町では豊かな自然の魅力を発信し、観光回復を目指している。

新燃岳、7年ぶり噴火も活動低下 警戒レベル2に

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2025年6月、7年ぶりに噴火した新燃岳は、一時、噴火警戒レベルが3に引き上げられ、火口から約3kmの範囲が立ち入り規制の対象となった。

しかし、10月17日、気象庁は火山活動の低下が認められるとして、警戒レベルを火口周辺規制の「2」に引き下げた。

九州大学地震火山センター 松島健教授:
住民がどうしなければならないのかというのは、元々2kmの範囲は立ち入り禁止になっているし、レベル3の時も3km、4kmは立ち入り禁止になっているわけですから、それを守って頂ければ別に生活に対して特別な避難行動を取る必要はないという風に考えている。

風評被害、観光業に深刻な打撃

しかし、噴火してから10月17日までの噴火警戒レベル「3」の期間、期間、高原町は観光面で大きな打撃を受けた。

火山灰による直接的な被害はほとんどないにも関わらず、SNSなどで「危険ではないか」という誤ったイメージが広がったためだ。

火口から約8km離れた皇子原温泉健康村では、7月だけで約200人の宿泊キャンセルが発生。約9km離れたたかはるゴルフクラブでも利用者が2~3割減少するなど、風評被害は町全体に及んだ。

キャンプ場、夏の収益激減

新燃岳近くで、湖畔の自然を満喫できると人気の「御池(みいけ)キャンプ場」も、2025年の夏は深刻な影響を受けた。

奥霧島温泉郷 内村雅樹社長:
7月頃から宿泊客のキャンセルが相次ぎ、数十件に上った。特にテント宿泊は例年の3分の1以下に落ち込み、収益面で厳しい状況が続いた。

皇子原公園は「日帰り客」が支えに

このような状況の中、励みとなっていたのは、内村さんが別に運営する皇子原公園に遊びに来た日帰り客だったという。

アトラクションや釣り堀などを利用した客からは、「普通に遊べる」という声が聞かれ、噴火の影響がないことを実感してもらうことで、リピーターの獲得につながった。「かえって味方になってもらうというか、ファンになってくれたような感じがした」と内村さんは話す。

9月には予約がゼロの週末もあったが、10月には回復し、「見捨てられたのではないかという気持ちもあったので、ホッとしている」と胸の内を明かした。

 ふるさと納税で地域経済を支援

観光客の落ち込みを受け、高原町は地元の事業者支援と地域の魅力発信のため、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングで寄付を募ってきた。

高原町産業創生課 森山業課長:
地元の業者を応援したいという声を本当に感じてくれて、目標額を3カ月で突破できたので本当にありがたいなと思っていて、この事業を構築して、高原に来ていただいて、寄付してくれた人たちに”頑張っているよ“とかメッセージを届ければなと思っている。

集まった寄付は、町内で使用できる共通利用券や町の観光PRに使うことが検討されている。

火山との共存、新たな観光の形模索

専門家は、新燃岳の今後の活動について、「大きな直接的な被害を及ぼすような噴火ではなかった」とし、これまで通りの生活を推奨している。

一方、事業者は、新燃岳との今後の向き合い方について模索している。

奥霧島温泉郷 内村雅樹社長:
離れられないので、この場所でやっていく以上は、怖がるばかりじゃなくて、何かもう少し踏み込んで、避けるばかりじゃない何かがあればいいなと思う。

観光客に対しては、「鳥の声とか、野鳥の森がある。静寂を楽しんでもらえれば。風の音とか水の音とか、一番かな」と、高原町の豊かな自然を五感で楽しんでほしいと話す。

火山と共存してきた高原町は、風評被害を乗り越え、赤く染まる山々の季節とともに、さらなる観光の回復を目指している。

(テレビ宮崎)

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