長年バスの運転士を務めた御霊を乗せた船は「バス」だった。30年間無事故だった故人を偲んで、家族は“安全運転”で見送った。

「精霊バス」 亡き父への思いを乗せて

長崎市下西山町の住宅街で製作されていたのは、「精霊船」ではなく「精霊バス」だ。

本物そっくりの「精霊バス」
本物そっくりの「精霊バス」
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長さ4.8m、高さ2m、幅1.5mのバスに乗るのは、2025年3月に69歳で亡くなった林勇次さんだ。

林勇次さんは32年間バスの運転士だった
林勇次さんは32年間バスの運転士だった

林さんは32年間、長崎バスで運転士として勤務し、退職後も幼稚園のバスで子どもたちの送迎を担っていた。

息子2人が中心となって製作した
息子2人が中心となって製作した

精霊バスは、林さんの息子2人が中心となって製作した。

遺影はバスのハンドルを握ったものだ。次男の淳平さんは「色んな縁があって長崎バスのラッピングをしている会社とつながりが持てたので、せっかくだったら本物に近づけたかった」と、本格的な仕上がりについて説明してくれた。

本物へ近づけるこだわり

バスの行き先表示は「西方浄土」と記され、ナンバープレートは名字の「林」の語呂合わせで「884」。

ナンバープレートは「884(はやし)」
ナンバープレートは「884(はやし)」

さらに、バス用の特殊なミラーもインターネットオークションで入手するなど、細部にまでこだわった。

バス用のミラーをインターネットオークションで入手
バス用のミラーをインターネットオークションで入手

ミラーの取り付けは運転席からの視界を考慮して高さや角度も細かく調整されていて、その徹底ぶりが伺える。「高さは?」と運転席の父親に確認しながら取り付け、まるで親子で会話をしているかのように和やかに作業が進められていた。

印燈籠は“バス停”に

精霊流しの際に船を先導する人が持つ「印燈籠」にもこだわった。

印燈籠は「バス停」だ
印燈籠は「バス停」だ

街なかで見かける「バス停」を模している。

30年、無事故を続けて表彰されたことがあったという林さん。

流すときは「安全運転で」と決めていた
流すときは「安全運転で」と決めていた

長男の洋平さんと次男の淳平さんは「30年間無事故で表彰されたことは本人も自信ありげに言っていたのでそれを引き継ぎ、流すときは無事故・無違反。けがなく元気よく流したい。父が運転席にいる最後だと思うので、最後まで無事故・無違反が一番ですね」と、父の安全運転の誇りを継承する思いを語った。

最後まで“安全運転”で

精霊流し当日、林さんの精霊バスは精霊船の流し場=終着点となる大波止までを安全運転で走り続けた。

安全を守り続けた林さんの精神が受け継がれた
安全を守り続けた林さんの精神が受け継がれた

長年バスの運転士として安全を守り続けた林さんの精神は、最後の旅路でも息子たちに受け継がれていた。

(テレビ長崎)

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