天皇皇后両陛下の長女・愛子さまは、初めての外国公式訪問として11月17日から東南アジアのラオスへ向かわれた。長年にわたる日本からの支援もあり伝統的な親日国のラオス。現地でご訪問を待ちわびていた人たちの思いとは…両国の友好親善の懸け橋となる愛子さまの旅、その裏側を取材した。

ラオスと日本の繋がり

ラオスの首都ビエンチャンの玄関口、ワッタイ国際空港。入国手続きを済ませて屋外に出るとまず目に入ってくるのは、日本とラオスの国旗が並ぶプレートだ。そこには、次のように記されている。

首都ビエンチャンのワッタイ国際空港にある日本・ラオス友好のプレート
首都ビエンチャンのワッタイ国際空港にある日本・ラオス友好のプレート
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「ビエンチャンの国際空港拡張プロジェクト~ラオスと日本の友好と協力の証として-日本のODAによる資金提供~」

実は、日本はラオスに対するODA(政府開発援助)が世界で最も多い。1955年に国交を樹立して以降、空港をはじめ、ダムや道路、橋などのインフラ整備を支援している。

ODAで建設されラオス紙幣にも描かれているラオス日本大橋=通称・パクセー橋 (JICA提供)
ODAで建設されラオス紙幣にも描かれているラオス日本大橋=通称・パクセー橋 (JICA提供)

隣国タイとの国境に建設されたラオス日本大橋(通称・パクセー橋)は、周辺地域の経済発展の象徴として紙幣にも描かれている。

1965年にJICA(国際協力機構)の海外協力隊が最初に派遣された国もラオスで、長年にわたり教育や医療など様々な分野で草の根の支援を続け、現地の人々の暮らしに寄り添ってきた。

首都ビエンチャン郊外のドンカムサン教員養成校・付属小学校
首都ビエンチャン郊外のドンカムサン教員養成校・付属小学校

現在、ラオス全土の小学校では、JICAが開発した算数の教科書が使われている。我々が取材したビエンチャン郊外の学校では、小学4年の児童たちが無償で配布された教科書と定規セットを手に、角度を計算する学習に熱心に取り組んでいた。

ウォンペット・オンシマ先生(35):
JICAが開発した教科書はレッスンを分かりやすく組み立てていて、とても良いです。

女子児童(小学4年):
先生から教科書でいろいろ習えて楽しい。

ドンカムサン教員養成校・付属小学校でJICAが開発した算数の教科書を使って学ぶ児童
ドンカムサン教員養成校・付属小学校でJICAが開発した算数の教科書を使って学ぶ児童

こうした援助が貧困率の改善と経済成長につながったラオスは伝統的な親日国で、2026年には後発開発途上国からの卒業が国家目標に掲げられている。

「愛子さまに会いたい」ご訪問を心待ちに

国交樹立70周年にあたりラオス政府から招待を受けた愛子さまは、日本と繋がりがある様々な場所に足を運ばれた。そのひとつが、日本から授業を支える「パートナー」が派遣され、日本語や日本文化の魅力を伝えている中高一貫校だ。

愛子さまの写真をスマホで見ながらデッサンをするビエンチャン中高一貫校の生徒
愛子さまの写真をスマホで見ながらデッサンをするビエンチャン中高一貫校の生徒

ご訪問2日前に学校を取材すると、生徒たちが日本語で書かれた歓迎の飾り付けをするなど準備の真っ最中だった。女子生徒の一人は、愛子さまが20歳を迎え、ロングドレスで成年行事に臨まれた際の写真をスマホで確認しながら、真剣な表情でデッサン画を描いていた。別の生徒は「愛子さまに会いたい。『ラオスと日本の文化はどう違いますか』と聞きたい」と緊張した面持ちで話していた。

生徒たちが描いたデッサン画と手に記念撮影された
生徒たちが描いたデッサン画と手に記念撮影された

11月19日、ついに愛子さまが学校をご訪問。日本のカフェでの注文の仕方を学ぶ授業を見守り、生徒たちと笑顔で交流された。そして、女子生徒から完成したデッサン画を贈られると「ありがとう」と語りかけ、一緒に記念撮影をされた。

愛子さまは、天皇陛下が皇太子時代の2012年に訪問された「日・ラオス武道センター」にも向かわれた。この施設では、JICAの海外協力隊員が柔道の監督として指導に当たっている。

ラオスで柔道を教えるJICA隊員・菊地友輝監督
ラオスで柔道を教えるJICA隊員・菊地友輝監督

柔道の指導をするJICA隊員・菊地友輝監督(34)は、「柔道って楽しいんだ、もっと続けたいと思うような柔道普及をさせていただきたい」と話す。

「愛子さまに『カオピヤックを食べてください』と伝えたい」と語るシッティーサン選手
「愛子さまに『カオピヤックを食べてください』と伝えたい」と語るシッティーサン選手

ご訪問の前日、東京五輪に出場したラオス柔道代表のスックパサイ・シッティーサン選手(29)は、「愛子さまに『ラオスの食べ物は大丈夫でしょうか?カオピヤック(うどんのようなラオス料理)を食べてみてください』と伝えたい」と意気込んでいた。

シッティーサン選手と懇談された
シッティーサン選手と懇談された

施設を訪問した愛子さまは柔道・空手・合気道・剣道の演武を見守り、大きな拍手を送られた。そして、シッティーサン選手に歩み寄ると、「迫力のある素晴らしい柔道を見せて頂いてありがとうございます」などと声をかけられた。ご訪問後、シッティーサン選手に懇談の際のやり取りを振り返ってもらうと、緊張しすぎてあまり覚えておらず、食べ物の話も聞けなかったそうだ。ただ、「次の五輪に向けてすごく頑張れる気がする」と誇らしげに話した。

世界遺産の古都ルアンパバーンへ

11月20日、愛子さまは高速鉄道でビエンチャンから北に約2時間の古都ルアンパバーンへ向かい、世界遺産の旧市街ではラオスで最も美しいと言われるシェントーン寺院などを巡られた。

愛子さまが訪問されたシェントーン寺院
愛子さまが訪問されたシェントーン寺院

その後、日本のNPO法人が運営する「ラオフレンズ小児病院」をご見学。この病院は、医療が行き届きにくい山間部の子どもなどを24時間体制で受け入れていて、愛子さまはやけどで入院している男の子に「痛かったですね」などと優しく声をかけられた。

ラオフレンズ小児病院で入院中の男の子に優しく声をかけられた
ラオフレンズ小児病院で入院中の男の子に優しく声をかけられた

院内を案内した赤尾和美看護師によると、赤十字社に勤務する愛子さまは「文化の違いを感じることはありますか?」などと熱心に質問された。ご訪問の予定を当日聞かされた子どもたちは、驚きと同時に緊張していたものの、プリンセスとの対面をとても喜んでいたという。

「悠久のメコン川の流れのように発展を」

愛子さまが利用された高速鉄道「中国ラオス鉄道」の車内は、多くの観光客や地元の人たちで混雑していた。中国の広域経済圏構想「一帯一路」の象徴に位置づけられたこの鉄道をはじめ、ラオスでは中国の影響力が強まっている。ただ、ラオス政府のある関係者は「中国のインフラ整備は良質とは限らず、日本が提供してくれるものは信頼性が高い」と明かした。

今回の愛子さまのご訪問について、ラオスの新聞は一面に民族衣装姿の写真を載せて「両国の友好を際立たせた」と報じた。

世界遺産の古都ルアンパバーン旧市街から臨むメコン川
世界遺産の古都ルアンパバーン旧市街から臨むメコン川

「日本・ラオス両国において、お互いの国への理解や関心がより一層高まり、果てしなく続く悠久のメコン川の流れのように、どこまでも発展していくよう願っています」

初めての外国公式訪問を終えて22日に帰国された愛子さま。現地でのおことばのように、日本とラオスの懸け橋として、両国の絆を次の世代へと繋ぐ旅となった。
(FNNバンコク支局長 田中剛)

田中剛
田中剛

FNNバンコク支局長。2000年フジテレビ入社。情報番組「めざましテレビ」「とくダネ!」でディレクターやコーナーデスクを担当。
2010年から報道局社会部で司法クラブ、宮内庁クラブ、デスクを経て、2022年8月から現職。